静岡県西部地域を中心に、鉄道・バスの運輸事業をはじめとして幅広い事業を展開する遠鉄グループの一角である、遠鉄システムサービス株式会社。同社では日本とベトナムの共同開発プロジェクトにCacoo、Backlog、Nulab Passを活用し、円滑なプロジェクト推進と連携強化を実現しています。
異なる言語や文化を持つメンバー同士で開発を進めるオフショア開発で、どのようにツールを活用していったのでしょうか? グループ情報システム部の大庭 俊氏、木村 凌氏、兼子 直記氏に詳しくお話を伺いました。
導入目的 |
・Azureの構成図などの作図や共有を効率化したい |
課題 |
・PPTやExcelで作図しており、作業効率や共同編集に課題があった |
効果 |
・言葉だけでは伝わりづらい説明も絵や図解で補足することで正確に伝わる |
業界 | システム開発, IT・通信 |
職種 | システム開発 |
利用しているヌーラボサービス | Backlog, Cacoo, Nulab Pass |
Cacooユーザー数 | 約20名 |
目次
Cacooの導入で作図の効率化と共同編集が可能に
—— 御社の事業概要と、皆さまが所属する部署について教えてください。
当社は、遠鉄グループ全体の業務システム開発を担うほか、地域の教育現場、行政サービスなどのシステム構築やサポートなど、ワンストップのICTソリューションを提供しています。
私たちが所属するグループ情報システム部では、グループ全体のシステム開発および保守を担当しています。エンジニアとして主にアプリケーション開発を担当していますので、Azureの構成図を作成したり、会議の際に絵や図を描いて共有したり、さまざまな場面でCacooを活用しています。
—— Cacoo導入前は、どのようなツールをお使いだったのでしょうか?
主にPowerPointやExcelを使用して構成図を作成していました。しかし、社内で使われているOffice製品がクラウド版ではないため、複数のメンバーでの同時編集ができない点に使いづらさを感じていました。
そこで、問題を解消するために、いくつかの作図ツールを比較検討することにしたのです。候補の一つとして、Cacooの存在を知りました。
—— Cacooを導入した決め手は何でしたか?
構成図を作成するときに必要な、AzureやAWSなど各クラウドサービスのアイコンがツール上で揃っていることが大きなポイントでした。また、Cacooは他社のサービスと比べて直感的に操作できるため、初めて触れる社内のメンバーにも使ってもらいやすいと感じました。
組織全体でCacooを利用できるように、チームプランの契約を開始したのが2022年4月のことです。その後、開発プロジェクトの管理に利用していたBacklogとアカウントを統合しました。
現在では、社外のお客様やパートナー企業の方々をゲストユーザーとして招待するケースも増えたため、Nulab Passも導入してセキュリティの強化を図っています。
オフショア開発プロジェクトにCacooとBacklogを活用
—— オフショア開発プロジェクトについて詳しく教えてください。
2021年7月に、遠鉄グループの第二のシステム開発拠点として「遠鉄ベトナム有限会社」が設立され、本格的なオフショア開発に取り組み始めました。その中で、大きく2つの業務課題が見えてきたのです。
一つは翻訳者を介した会話や文化の違いから生じるコミュニケーションの齟齬、もう一つは、アジャイル開発やWeb系システムに対する知見や技術的なノウハウが不足していることでした。
そこで、2022年度より日本側で社内プロジェクトチームの発足やアジャイル開発の実践など、開発スキル向上への取り組みを開始。また、ベトナムとの共同開発における開発フロー・プロセスを改めて策定し、開発ルールを標準化することで品質の担保も目指しました。
そして、いよいよ親会社である遠鉄鉄道と、遠鉄ベトナム、当社の3社による共同開発プロジェクトがスタートします。遠州鉄道からプロジェクトオーナー、当社からアプリ開発およびインフラ開発のメンバーが計5名、遠鉄ベトナムからアプリ開発のメンバーが6名という体制です。ベトナムとのやり取りは、引き続き翻訳者を介して行いました。
—— どのようにプロジェクトを進めていったのでしょうか?
設計など上流工程の部分は日本側でしっかりと固め、開発フェーズではベトナム側と柔軟に進行していく、ウォーターフォール開発とアジャイル開発のハイブリッドで進行しました。
まずは、対面によるキックオフと懇親会を実施しました。システムの要件や機能についてディスカッションし、お互いの人となりを知ることで「共にプロジェクトを成功させよう」と結束が生まれたように思います。
ツールはヌーラボのサービスを大いに活用しました。プロジェクトのタスク管理や情報共有にはBacklogを、構成図の作成や2週間のスプリントごとのふりかえりにはCacooを使用することに。Web会議ツールとチャットツールも併用しながら、日々コミュニケーションを取っていきました。
—— その中で、Cacooはどのように活用されていたのですか?
主に、1スプリント2週間ごとに実施した振り返りの場でCacooを活用していました。KPT法*を用いて、Cacoo上で「Keep(続けたいこと)」「Problem(問題だったこと)」「Try(次にトライしたいこと)」を付箋に書いて貼り、改善方法を話し合うといった流れです。
*KPT法とは:行動や結果を「Keep(継続したいこと)」「Problem(改善すべき課題)」「Try(新しくやってみたいこと)」の3つの観点から整理して、プロジェクトや活動を振り返るフレームワーク
また、複雑な仕様に関してはCacooで図や絵を描きながらディスカッションし、内容をすり合わせていきました。
タスク管理で活用したBacklogも、日本とベトナム、双方のコミュニケーションを助けてくれました。課題に起票したタスクは翻訳者を介してやり取りを行うのですが、内容をテキストに落とし込むことで、口頭のみのやり取りに比べて誤解が生まれにくいと感じています。
言葉では伝わりづらい内容も、絵や図を活用して共通の認識を持てるように
—— 言語の異なるメンバー間でのコミュニケーションにおいて、Cacooはどのように役立っているのでしょうか?
オンラインで行われるベトナムとのやり取りにおいて、やはり言葉だけでは伝わりづらい場面も少なくありません。そんなときはCacooで絵や図解を交えながらコミュニケーションを取ることで、プロジェクトメンバー全員が共通の認識を持ちながらスムーズに開発を進められました。
特に技術的な話の場合は翻訳者を介することで認識のずれが生じてしまうことがあります。ずれを解消するためには複数回の会話のラリーが必要になりますが、そこに視覚的な情報が加わると話が非常に早く進められるんです。Cacooは、まるでリアルの会議室にあるホワイトボードのような役割を果たしてくれています。
相互の理解が進むことで、通訳者を介さなくてもエンジニアメンバー同士でダイレクトに意思疎通できる場面も生まれるようになりました。
—— プロジェクトを成功させる上で、やはり共通認識を持って業務を進めることは重要なのですね。
その通りです。継続的な振り返りを行うことで、お互いの考えを知り、円滑なコミュニケーションが実現できたと感じています。
また、Backlogの活用によって、情報共有やタスク漏れの防止にもつながりました。きちんとタスクを登録していくと、ガントチャート機能やボード機能によってプロジェクトの全体像や進捗を俯瞰して見られるようになります。ベトナム側の業務状況もリアルタイムに確認でき、時差や物理的な距離があっても安心してプロジェクトを進めていけました。
Cacooは、チームビルディングを支えてくれる存在
—— 最後に、CacooやBacklogの活用について、今後の展望をお聞かせください。
今回のプロジェクトでの成功体験を活かして、ほかのオフショア開発プロジェクトでもCacooとBacklogを活用できればと考えています。Cacooにはさまざまなテンプレートが用意されているので、それらを活用して新たな使い方にもトライしてみたいですね。
CacooやBacklogは、オフショア開発におけるコミュニケーション課題を解決するだけでなく、チームビルディングそのものに大きく寄与するツールだと感じています。今後も大いに活用して、グループ全体の協働や開発力を高めていきたいと思います。
—— 貴重なお話をありがとうございました!