こんにちは。Backlogグロースハックチームの砂川です。
今回はBacklogがサービス改善のために行なっている「アンケートを表示する機能」と、その機能によって回答率がどれほど改善されたかについてご紹介します。ユーザーの方々の声をサービスの改善に役立てたい方の参考になれば嬉しいです。
Backlogが行なった取り組み
Backlogでは、これまでユーザーの方々にアンケートをとりたい場合、Backlogの上部にお知らせとしてGoogleフォームへのリンクを張っていました。
しかし、Backlogユーザーの方々のような、アンケート目的に集められていない人々を対象にしたwebアンケートでは、一般的に回答率がかなり低くなってしまいます。実際Backlogでも、上記のような形式では回答率が1%を大きく切っていました。直近のアンケートではなんと約0.3%……。アンケートは答えていただくユーザーの方々の労力と時間を奪ってしまいますから、この回答率の低さもある意味当然ではないかと思います。
そこでBacklogでは、もっと効率よく、継続的に、ユーザーの方々に気持ちよく回答してもらうために、アンケートをとるための機能を実装しました。
結論から書くと、Backlogでは「あのー……、仕事の邪魔をして本当に申し訳ないんですけど……、よろしければ5秒だけお時間もらえます……?」という気持ちを込めました。言葉にすると長いですね。
なぜアンケートをとる?
グロースハックチームには業務のひとつとして「サービスの改善に役立つデータの収集」があります。トラッキングしたデータ、DBやログをかき集めては、ああでもないこうでもないと日々やっています。そんな日々を送っているうちに、ある種のデータが欲しくなってきます。それは、DBなどに記録されておらず、トラッキングもできないデータです。
たとえば、今Backlogを使っているユーザーが、実際にはどのような職種で、どのような業種の組織の中でBacklogを使っているのか。どの機能が一番気に入っているのか。あるいは正式契約をして頂くに至った最大の決め手はなんであったのか。これらは全て、Backlog上のデータからは分からない、ユーザーの一人一人に答えてもらわなければ分からない情報です。そこで必要になるのが、ユーザーの方々に答えてもらうアンケートです。
アンケートは邪魔者
アンケート機能を実装するにあたり、決して無視してはならない大きな問題がありました。それは「Backlogのユーザーはアンケートに答えるためにBacklogを使っているわけではない」ということです。
アンケートはなるべく目立たせて、多くのユーザーに答えて欲しい……でも仕事の邪魔はしたくない……そんな板挟みの中、アンケート機能にどのような工夫を盛り込んだのかをご紹介します。
工夫したポイント
1. 画面遷移しない
Backlogの利用を極力妨げないために、画面遷移をせずに左下にウインドウを表示するようにしました。また開発当初はモーダルウインドウとして、アンケートウインドウを表示している間は他のUIをクリックできないようにしていましたが、利便性を考慮して表示中も他のUIを利用できるように変更しました。
2. 一度に質問するのは一問だけ
次に、一度に質問するのは一問だけに決めました。回答をひとつ選択して送信ボタンを押せばそれで完了です。5秒で終わります。
3. 選択式の回答のみ
さらに、自由回答の項目を削りました。自由回答のデータは分析上非常に有用なのですが、この項目があると、どうしてもそこに意識が向かってしまうユーザーが現れるのではないか、と考えたからです。
4. 次の質問は数日後
そして、一度回答を終えると、次の質問は数日後まで出ません。長いスパンでゆっくり回答を集めるようにしています。
5. 回答は任意
また、答えたくなければウインドウを閉じればまた数日後まで出てきませんし、別の画面に移動するだけでも消えます。もちろん今後表示しないボタンも用意しています。
6. お礼の言葉
最後に、回答後には感謝の言葉を表示するようにしました。時間を割いて協力をして頂いたのだから、お礼はどうしても入れたいと思いました。
改善結果
これらの機能を盛り込んだアンケート機能と、Googleフォームのリンクを張る従来の形式の回答率を比較したグラフがこちらです。
まず、完全回答である質問6の回答率は、改善前のGoogleフォームでの形式より30%ほど改善しました。
しかし注目ポイントはそこではありません。最も大きなポイントは序盤の質問の回答率です。気軽に回答できるようにした結果、従来の形式とは比較にならないほど高い回答率を得られるようになりました。最初の質問の回答率は4426%アップです。ここの回答率の改善が大きすぎて、質問6の回答率改善が霞んでしまうほどです。
また、ひとつの質問に答えた時点でその情報を得られるのもポイントです。Googleフォームでのアンケートのようにまとまった質問に答えてもらう場合、最後まで回答をして送信ボタンを押してくれたユーザーの回答しか得られない、という性質があります。そのため、比較的多くのユーザーが答えてくれるであろう序盤の質問に対する回答を取り逃がしてしまうのです。
それに対して一問一答形式のアンケート機能の場合、各質問の回答は答えた時点で得られます。そのため、単純に計算すると、総合的に得られる情報が10倍以上に増えました。序盤の質問に重要なものを持ってくることで、実質的な情報量を高めることも可能です。
さらに、Backlogのシステム内に組み込んであるため、これまで蓄積してきたデータと組み合わせた分析も容易になりました。
おわりに
今回の事例はいかがでしたでしょうか?ユーザーの方々に回答して頂いた情報は日々サービスの改善に役立てています。Backlogはこれからも、ユーザー目線・開発者目線の双方を忘れずに開発を進めていきます!