こんにちはこんばんは。インハウスチームのonoeです。
データ活用を推進するミッションを持つインハウスシステム課(以下、インハウスチーム)では今年、データ活用のためのロードマップを作成しました。
ちょっと大げさですが、本ブログ記事ではロードマップ完成までのその苦闘の歴史をお伝えしたいと思います。
データ活用に取り組み、悩んでいる人の一助になれば幸いです。
目次
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データの活用は自分たちだけが頑張っても仕方がない
私の所属するインハウスチームはデータ活用を推進することが主な業務ですが、たとえば一生懸命頑張って良いデータ基盤を構築してみたり、データをたくさん集めてみたりしても、結局使ってもらわないと意味がありません。
そして、使うのはヌーラボにいるすべての人たちです。開発、セールス、マーケティング、バックオフィス、etc・・・ といったすべての業務で、データを活用してもらいたいと思っています。
なぜロードマップをつくったのか
先に書いたとおり、データ活用は自分たちだけでどうにかできるものではなく、会社全体で取り組んでいかないといけません。ただ、いきなり他の部署の人に「データを集めたいから協力してほしい」とか「データリテラシー教育やるので、このコンテンツを受講してください」とかってお願いすると、
「やるけど、これは結局なんのためにやってるの?」ってなっちゃうんじゃないかなーと考えました。
理由がよくわからないものに取り組むのもなかなか苦痛だと思うので、以下の3点を伝えるためにロードマップを作成することにしました。
- インハウスチームとしてどういうゴールを目指しているのか
- そのゴールにたどり着いたらどういう世界が待っているのか
- そのゴールにたどり着くために、何をやる(やってもらう)のか
まとまらない意見
実はデータ活用に関するロードマップ作成については、かなり昔から取り組んでいます。インハウスチームの記録を紐解くと、2021年ごろから断続的に作成に着手していました。
その頃、どのようにやっていたかというと、チームで時間をとって、私がファシリテーターとしてデータ活用・データ組織についてどう進めるのがいいか?というテーマを元に、Cacooで付箋を使って意見を出しながら議論を繰り返していました。
ところが、なかなか意見がまとまらない・・・・
まとまらないというよりも、データ活用する組織、というものの認識が曖昧だったり、「データを活用する組織」を達成するための要素が多すぎて、議論がどんどん散らかっていってしまうのです(まあファシリテーターの能力不足ってこともあるんでしょうけども)。
このブログ記事を書くために、過去のCacooを漁ってみるとほんとにたくさんの図が出てきました。いろんな形式でデータについて考えて作成し、そしてボツになって忘れられてきた図たち・・・・供養のため貼っておきます。
過去にチームで作成した、データを活用する組織を考えたマインドマップ
2022年ごろに作成した仮ロードマップ。 ぼかし部分には「こういう状態になっている」ということが書かれています
あるときはDMBOK(データマネジメント知識体系ガイド)を、あるときはDXクライテリアを、あるときはモダンデータアーキテクチャを参考にして、チームの意見をまとめようとしましたが、どのアプローチもなかなか納得できるものにはならず頓挫してしまいました。
2021年から2年にわたり、継続的に取り組んでいたのですがなぜまとまらなかったのか。少しふりかえってみました。
失敗その1:ついつい目の前の課題を見てしまう問題
議論をしているうちに、今見えている課題に目がいってしまって、具体的な解決策の話ばかりをしてしまう。見えてる問題は早く解決したいもんね。でもそれは手段であって目的ではないし、「今見えているから解決したい」というだけで、優先度が適切に判断されているわけではないのです・・・・。できあがるものはロードマップではなくて、ただのタスクリストなんですよね、それ。
失敗その2:「全部大事だよね」症候群
繰り返しますが、データを活用する組織を達成するために考える領域はめちゃくちゃ多いです。ざっとDMBOKの目次で見ただけでも、
- データマネジメント
- データガバナンス
- データアーキテクチャ
- データモデリング
- データセキュリティ
- データ品質
- メタデータ管理
- BIツール
といった領域に分かれていて、「どこから手をつけたら・・・・」な気持ちがわきあがってきます。チーム内での議論のときも同じで、「これ結局全部やんないといけないよね、大事だよね」となって、途方に暮れるインハウスチームが出来上がります。結果、どの領域から着手するのが一番よいのかさっぱり分からなくなって、迷子になります。
失敗その3:本に振り回されちゃう問題
データ活用については、たくさんの本が出ています。インハウスチームでもそういった本の読書会を開催したりしていますが、ここに落とし穴があります。
本に書いてあることは理想像です。
本によりますが、だいたいは「あるべき論」が書いてあります。そして巻末に、「データ組織になるための雛形」みたいなものがあったりして、その雛形にそって進めるのがいいよ、とか書いてたりするわけです。
で、こちらとしても手探りなわけなので、そういった雛形をもとに考えていったりするのですが、これはだいたい上手くいきませんでした。
あとから考えれば理由は簡単で、「ヌーラボで解決しないといけないこと」は本には入ってないわけです。あくまで参考として本を使うのが良いのですが、無理に本に書いてある内容に合わせようとすると、話はまとまりません。ロードマップにはならないわけです。
2023年夏、再チャレンジ
2021年頃から断続的に取り組んでいたロードマップ作成ですが、上記のような失敗もあり、たくさんの資料が作成されたものの、完成にはいたりませんでした。
そして今年の夏頃、何度目かわからないですが、ロードマップ作成の取り組みを再開します。ただ、これまでと同じようにMTGをして意見を発散させていたのでは、また同じ轍を踏み、完成にはいたらないだろうと考えました。
これまでチーム内での議論に多くの時間を使っていたので、「データを活用する組織」というものに対するチームメンバーの理解度は、ある程度一致していたように思います。
それなのに、なかなかまとまらないのは「データを活用する組織」に関連するトピックが多岐にわたっていて、議論が横道にそれやすいからでは?と推測しました。だったら横道にそれないように、議論の範囲を限定してしまえばいい。
「たたき台」を作る
話が横道にそれてしまったり、散らかったりしてしまわないように、議論の元となるたたき台の資料を作ることにしました。
また、これまではロードマップを最終的にどのようなフォーマットで作成するか、というのを明確にしていなかったのですが、私の独断と偏見でアウトプットの形を、Googleスライドに決めて、たたき台を作成しました。たたき台に含んだ内容は以下の内容です。
- なぜヌーラボがデータを活用する組織を目指すのか
- データを活用する組織になれば何がうれしいのか
- 今、ヌーラボはどういう状態なのか
- 理想の状態になるために何をやらないといけないのか
- どのような取り組みをやるのか
これまでと少し違うのは、上記の内容をチーム内で考えるのではなくて、まず「私の思う内容はこうです!」と、具体的な内容を全て書いたところです。これまでチーム内でもたくさん議論をしたので、かけ離れた内容ではなかったと思いますが、あくまで私の独断です。
この資料を元にブラッシュアップしていきましょう、という方針でロードマップ作成の取り組みを再スタートさせました。
そしてどうなった?
結果的に、たたき台を作成したことは成功でした。
たたき台にそって議論が整理されるので、横道にそれたりすることが少なくなり、意見をまとめやすくなりました。また、私が最初につくったものはテキストだけの簡素なものだったのですが(たたき台ですし)、チームメンバーからいろんなアイデアが出てきて、どんどんと賑やかなものになっていきました。資料を作るのが楽しい、というのはMTGをするときに大事なことです。わくわくしますもんね。
ロードマップ冒頭のスライド 右下はインハウスシステム課 マスコットキャラクター・サンショウさん
ただ個人的には、これまでの長い時間で重ねた議論がなければ、たたき台があってもうまくいかなかったんじゃないかな、と感じています。
たたき台には「議論をこの範囲でやります」と限定する意図があったので、「もっと他に話したほうがいいことあるのでは」という意見が出てきていた可能性もありますし、これまでの積み重ねがあってこそだと思います。
いざ公開!
2023年夏ごろスタートして約3ヶ月、13回のMTGを経てロードマップ資料は完成しました。2021年からの様々な失敗を考えると、すごいスピードで完成させることができたと思います。会社の方針との齟齬がないことを確認、英語版もあわせて作成し、ついに長い道のりを経て、ロードマップを全社へ公開することができました。
ロードマップ資料最後のスライド
ロードマップは、時間をとって全社に説明する場を用意しました。
参加者から「インハウスチームが目指している世界がよく分かりました」「本格的な分析ができるようになるのが楽しみです」といった嬉しい言葉や、「どういうデータを集めていく予定ですか?」などのロードマップに関する質問もいただきました。
これまでは「インハウスチームってなんかデータのことやってるんだよね?」というふわふわした認識だったのが、「データを活用できるように推進していくチームなんだな」という風に、社内の認知が少し変わったのではと感じてます。期待を裏切らないように気を引き締めてがんばらねば!という気持ちになりますね。
最後に
たとえば、少数のメンバーやマネージャーが「こういうロードマップにする」と決めてしまえばもっと早く出来上がっていたかもしれません。
ただ、これは私の勝手な思いですが、実際の取り組みはチーム全員でやるものですし、メンバー全員がきちんと納得できるようなものを作成したいという気持ちもありました。
結果、かなり時間がかかってしまいましたが、とにかく完成までたどりつけたのは良かったです。粘り強く取り組んできたチームメンバーもあっぱれです。
ロードマップの作成はなかなか困難な道のりではありましたが、本当に大事なのはこのロードマップを現実にしていくことです。
これから一つずつ、着実に実現していきながらもっともっとデータを活用していきたいと思います!