海外出身の同僚に気付かされた「やさしい日本語」の大切さ #ヌーラバーブログリレー2021

このブログは、ヌーラバーブログリレー2021 7日目のブログです。明日の担当は橋本さんです。

ヌーラボに入ってもうまる5年が経ちました、人事のAngelaです。IT企業に5年というと、長く感じられる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、5年いてもまだまだ新しい発見があるものです。今日はその発見の中でも「日本語」についての気づきを得る機会があったので、ヌーラバーブログリレー2021 に乗せてお届けしたいと思います。

ちなみにこのブログで使っている日本語は、まったくやさしくないです、ごめんなさい!笑

きっかけは同僚とのSmall Talkでの一言

ヌーラボにはSmall Talkというチームや上司部下の関係を取り払って1対1で気軽に話せる制度があります。そこでカナダ出身の同僚(以下、JP)と話していた時、ふと言われた一言が、結構印象的でした。

「ずっと福岡に住んでいるから博多弁はわかるけど、東京弁は理解が難しいことがあるんだよね」

え!そうなの!っていうか、東京弁ってどれのこと?!

例えば

  • 〇〇じゃん?
  • 〇〇やん?
  • 〇〇やない?

こんな微妙な語尾や言い回しの違いが日本語の理解を阻害することがあるのだということを教えてもらいました。
これをきっかけにやさしい日本語について学んでみようと思いました。

やさしい日本語ってなに?

「やさしい日本語」とは、普通の日本語よりも簡単で、外国人にもわかりやすい日本語のことです。

1995年1月の阪神・淡路大震災では、日本人だけでなく日本にいた多くの外国人も被害を受けました。その中には、日本語も英語も十分に理解できず必要な情報を受け取ることができない人もいました。

そこで、そうした人達が災害発生時に適切な行動をとれるように考え出されたのが「やさしい日本語」の始まりです。

東京都オリンピック・パラリンピック準備局 サイトより引用

この「やさしい日本語」の存在は、最近のメルカリさんの取り組みで一気に世の中に広がってきたように思います。

メルカリさんの開発組織はすでに半数が日本語以外を母語とするメンバーということで、英語話者も日本語話者も両者から歩み寄るスタンスをお持ちのため「やさしい(優しい・易しい)日本語」の推進、併せて、やさしい英語の推奨に努めているようです。

推しまくりですが、詳しくはメルカリさんの取り組みをご覧ください。

今回のブログを書くにあたって、手始めにやさしい日本語に関する書籍やサイトをいくつか読みました。その中でも、社内外の人に共有したい明日からすぐにできるTipsを5つに絞って紹介したいと思います。

今回のブログを書くにあたって読んだ本たち

 

明日からすぐにできる やさしい日本語 5Tips

1 情報を削って短い文章を。単文・短文(目安20文字前後)を目指す

文章のニュアンスが間違って伝わらないよう、私たちはたくさんの言葉を使って修飾しています。英語を想像すればすぐにわかるのですが、長い文章は読むのが辛いですよね。ハイ、すぐさまDeepL行きです。

日本語の構造は基本的に4種類です。

  • 単文:主語と述語が1つずつ
  • 重文:単文が複数つながっている
  • 複文:名詞を修飾している文がある
  • 重複文:重文と複文が組み合わさっている

できる限り「単文」、かつ余計なものは削ぎ落とした「短文」を目指すことがやさしさです。

目安を20文字と記載したのは、JPからのアドバイスです。JPは長い文章の場合、翻訳ツールにコピペした後に、わざわざ改行を加えて箇条書き形式にしてから翻訳をかけ、大枠を理解しているそうです。

 

2 漢字や言葉は極力重ねない

よく2つの熟語や言葉を重ねて表現することがあります。

例:「新入社員」「入社手続き」。

そもそも上記のような言葉は、英語で表記した方が早いのですが( newcomers など)、「来月入社する人」「入社の時にやること」などと言い換えた方が柔らかいですね。

また、日本語は漢字だけでなく動詞を重ねることがあります。

例:「送り返す」「呼び出す」

上記のような言葉は、表現を豊かにするために用いられる言葉なので、わざわざ動詞を2つ繋げなくても、「送る」「呼ぶ」だけで伝わるケースが多くありそうです。

これらの漢字や動詞を繋げた言葉は、翻訳のしやすさや理解を阻害しがちです。ニュアンスをこだわる時に使うのは◎ですが、伝えることをゴールにするのであれば避けた方が良さそうです。

3 主語を明確にする

これは日本語あるあるですね。主語をよく省きます。

前後の文脈を理解している前提ですが、正直わたしの場合、母語以外で「前後の文脈」と言われるときついです。一文ごとに翻訳しては頭の中がリセットされます。マエノブン、オボエテナイ。

少々オーバーなくらいに主語を付け足す方が親切なようです。

4 二重否定は使わない。特に「〜しか」は注意

二重否定の構文は、私たちの英語学習の際にも、比較的後半の方で習った記憶があります。やはり日本語でも二重否定は難しく、理解の妨げになりやすいようです。

例:こんな素晴らしい研修、受けないわけにはいきません。

この場合は「この研修は素晴らしいです。必ず受けます。」と言い換えた方がシンプルですね。

また二重否定と同類の言葉で「〜しか」という表現は要注意です。

例:「現金しか使えません」。

この「しか」という表現が否定のニュアンスを含むことを知らない人が見ると「現金は使えない」という風に読み違いが起きやすい表現なのです。この場合は「現金が使えます」とはっきり伝えるのが良いでしょう。

5 濁さない、言い切る

これ、実は私が日本語でカジュアル面談をする際にも一番気をつけていることです。

「今回のご転職は、職種を変えたいという希望があったようですが…。」
「何かご質問とかあれば…。」

ちょっと気を抜くとすぐに使ってしまうのですが、この「…。」手法は相手に自分の聞きたいことを言ってもらうことを、ある意味 ”勝手に” 期待するやり方だと思っています。コミュニケーションとして親切ではないですよね。
これを母語以外の言語でされると、やはり文脈を読み取る必要が出てきます。

 

Try! 実例紹介

上記のTipsをいくつか活用すると、このような言い換えができます。

漢字が重なった表現を減らし、文章を分割してより単純にしてみました。やさにちチェッカーでは「A」の評価から「S」の評価へと改善されました。

「〜しか」の表現を用いているのをやめ、簡単な動詞に言い換えました。こちらの文章も、やさにちチェッカーでは「B」の評価から「A」の評価へと改善されています。

 

英語を学ぶと相手の状況が想像できるようになる

すでにお分かりかと思いますが、以上のTipsを実践するプロセスは「英語翻訳ツールに入れるときの日本語編集」に似ています。みなさんも、日本語をそのまま翻訳ツールに打ち込んだら、英訳が明らかに違う意味になっていた。そして日本語を手直しした。そんな経験はありませんか?(最近はかなり翻訳ツールが発達してきましたが)

そんなとき、自然と上記のTipsを実践しているのではないでしょうか?人も徐々に語彙や表現を身につけ、言語を習得していきます。そのプロセスは翻訳のシステム強化と似ています。

英語を学ぶことで、自然と「やさしい日本語変換」の力も身に付いているのだと感じました。

最後に:今回の参考文献・サイト

今回をきっかけに、やさしい日本語のためには様々なサイトやツールが揃えられていることを知りました。いくつか紹介して今回のブログの締めとさせてもらいます。

やさにちチェッカー

http://www4414uj.sakura.ne.jp/Yasanichi1/nsindan/

日本語を挿入すると、その日本語の難易度を掲示してくれるサービスです。語彙、漢字、硬さ、長さ、文法の5項目をチェックしてくれます。

 

入門・やさしい日本語

https://www.ask-books.com/978-4-86639-352-0/

今回のブログを書くにあたって一番参考になった書籍です。この書籍自体がやさしく読みやすいのがポイント。

 

文化庁 在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン

https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/pdf/92484001_01.pdf

母語が日本語でない方も、日本で暮らすにあたって住みやすい環境が整えられるように、主に国や地方公共団体が発信する情報をやさしくするために作られたガイドラインです。

 

もしこの領域で取り組みをされている方で情報交換していただけるのであれば、いつでもAngelaまで気軽にお声がけください。

 

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