ヌーラボは「仕事におけるコミュニケーションを楽しくして、チームのコラボレーションを活性化させる」というコンセプトのもと、これまで皆さまに3つのサービスをお届けしてきました。プロジェクト管理ツールのBacklog、オンライン作図ツールのCacoo、チャットツールのTypetalk。実は、これらのプロダクトは社内の開発者が抱いた課題感がきっかけとなって生まれました。
先日、弊社代表の橋本(@hsmt)がヌーラボのチーム論について言及した「僕がお話しているプロジェクト管理とチームの作り方などについて」を公開し、たくさんのご反響をいただきました。そこで、本記事では、そのチーム論に基づいて生まれた「プロダクト」にフォーカスを当て、各プロダクトの発起人/初期開発者に、プロダクトアイデアが生まれた背景をお伺いしました。サービスの開始に至るまでの、ヌーラボならではの課題への取り組み方、自社サービスを使った業務改善事例などを、余すこと無くお伝えいたします。
ヌーラボのサービスの導入を検討している方はもちろん、既に導入している方にも、新しい気づきやサービスの活用例として、ご参考にして頂ければと思います。
すべての始まりは”もっと仕事を楽しみたいよね”という思いから
Backlogはプロジェクトを管理するためのサービスとして、2005年にベータ版を開始しました。サービスが生まれた当時は、SaaS(Software as a Service)なども存在しておらず、プロジェクト管理ツールはライセンス販売されたソフトウェアを稼働して利用することが主流でした。ヌーラボの共同代表者であり、最高技術責任者である縣は、初期のプロジェクト管理ツールに見られる、開発者向けに必要最低限の機能しか備えていない、使いづらいインターフェースに課題感を感じ、Backlogの開発を決意しました。
「当時のプロジェクト管理ツールのインターフェースは必要最低限の機能しか無く、どこか堅苦しさを感じていました。使い勝手を良くして、柔らかい印象を与えるようにしたいとずっと考えていて、開発者だけでなく社内の全員が参加できるようなツールをイメージしていました。せっかく作るなら、ただのプロジェクト管理ツールではなく、チーム内でのコミュニケーションを活性化させて仕事を楽しくするためのツールを作ろうと思い、Backlogのコンセプトが生まれました」
(Backlog発起人/初期開発者 縣 俊貴)
Backlogは”プロジェクトにおける情報共有やコミュニケーションを円滑にするためのツール”と語る縣は、当時のプロジェクト管理ツールではあまり見られなかった、ユーザーのアイコン設定をいち早く取り入れたり、Backlogのあらゆるところに「仕事が楽しくなる」仕掛けを散りばめました。
また、ヌーラボでは、チーム内で円滑なコミュニケーションを促進する上で重要な心構えとして「オープンであること」を掲げています。その心構えはBacklogにも活かされています。
「Backlogの機能で大切にしたのはオープン性です。Backlogの課題やwikiはプロジェクトに参加しているひとであれば、個人で自由に登録できます。オーナーを不在にすることは、各人が問題に対して自主的に動くような環境を構築することができます。また、wikiは、課題解決のノウハウを蓄積してチーム内で共有できるので、誰かと同じ障壁にぶつかった時に解決策をすぐに見つけられる効果もあります。他にも、星をつけて「いいね」の気持ちを表す機能があります。誰かが大きなタスクを処理して成果をあげた時などに使われているのですが、個人のモチベーションを高め、チーム内の意思疎通の向上に一躍買っていますね」(縣)
Backlogの設計作業を円滑に進めるために開発されたCacoo
Cacooはウェブ上で作図・共同編集できるオンラインツールとして、2009年にベータ版を開始しました。きっかけは、Backlogで仕様のやり取りをする際に、wikiに埋め込まれている設計図のイメージを編集したいという声が上がっていたこと、Backlog自体の設計作業にも活用できることから、開発が始まりました。
「ヌーラボにはエンジニアが多いのですが、作図ソフトを持っていないので、ワイヤーフレームは基本的にエクセル、パワーポイントで描いていました。一番の難点は、修正点があった際に、ファイル間でのやり取りになってしまい、気軽にフィードバックを出せなかったこと。「wiki」のように、インターネット上で誰もが平等に編集してやり取りができるようにすれば、この障壁を取り除けるのではないかと思い、Cacooのアイデアが生まれました」
(Cacoo発起人/初期開発者 縣)
Cacooは最初の構想からベータ版ローンチまでわずか6ヶ月で誕生しました。最たる特徴である、「共同編集」はヌーラボ社内のワークフローの革新的な改善と効率化を推し進めました。
「導入前は、Skypeなどの画面共有を使って図の編集をしていました。これだと、どちらか一方が編集して、片方がオーディエンスとなるような「オーナーシップの状態」が生まれてしまっていました。Cacooの導入によって、それが無くなったことで、業務の効率化がされたのはもちろん、お互いに気兼ね無くアイデアを出せるような「オープンでフラットな環境作り」にもつながりました」(縣)
さらに、リモートワークが主流のヌーラボの社内会議の場でも、Cacooは活用されています。
「ヌーラボには、東京と福岡、京都に拠点があるのですが、Cacooをリモート会議に活用しています。大人数で会議をする際に、対面であればホワイトボードを使って進めると思うのですが、ヌーラボの場合はリモートで行うため、ホワイトボードの代わりにCacooを使い、チーム内のイメージや認識を擦り合せています」
(Backlogプロジェクトマネージャー 中村 知成)
Backlogとの連携によりプロジェクト管理をより楽しくしたTypetalk
Typetalkは、プロジェクト単位で会話を管理できるチャットツールとして、2014年2月に開始しました。Backlogによって、プロジェクトにおける課題と解決策の”概要”を落とし込む場所はすでに出来上がっていましたが、課題になるまでのプロセスや解決に至るまでの動きを確認できる場所が無かったため、Typetalkのアイデアが生まれました。
「Typetalkを導入する前は、Skypeをチャットツールとして利用し、プロジェクトに必要なメンバーをその都度招待していました。しかし、Backlogで障害や問題が起きた時に、課題に対する結果を知れても、解決のためにどの様なプロセスを踏んだのかまでは把握できませんでした。ここをオープンにして、社内のナレッジやノウハウとして蓄積していきたいと思い、アイデアが生まれました」
(Typetalkプロダクトオーナー/プロジェクトマネージャー 吉澤 毅)
他のプロダクトと同様に、オープン性をコンセプトに開発が進められたTypetalkは、Backlogとの連携によって、機能性の高さをより発揮します。具体的な機能に、「まとめ機能」があります。Typetalk上の雑談のなかから生まれた「課題」に関するコメントを抽出して、Backlogにまとめて登録する機能です。そのまとめを参照することで、開発やプロダクトのヒントとなるやりとりを漏れなく確認することができます。
また、ヌーラボ社内では、Typetalkが業務の効率化のために使用されることもあります。
「普段リモートで仕事をすることが多いのですが、同じ空間(対面時、ビデオチャット時)にいて解決する課題でも、敢えてTypetalkに何をどのように解決したのか、ログするようにしています。プロセスをしっかりと記録することで、問題の経緯を調べる手間を省くことができます」(吉澤)
他にも、社内のBotの実験にもTypetalkが活用されています。Twitter上にポストされた、ヌーラボのプロダクトに関するツイートを定期的に検索し、Typetalkに流し込む仕組みが作られており、カスタマーサポートが各サービスの不具合に迅速に対応できたり、ユーザーフィードバックを全社で認識して、共有することにもつながっています。
シングルサインオンとヌーラボが目指す未来
NulabAccountは、Nulabのすべてのサービスを一つのアカウントでログインする、という目的のもと、2014年2月に開始しました。開発の背景には、Backlog for Businessに続き、Cacoo for Businessの提供が決まったこと、Typetalkがプロジェクトとして本格的に動き始めたことがきっかけでした。
主な特徴は、各アカウントを統合する「シングルサインオン機能」。今後、サービスが増えていく上で、ユーザーのアカウント管理の手間を省くための機能です。サービス利用時のアカウント登録も一度で済むので、ユーザーと管理者の双方のユーザーエクスペリエンスを向上させることができました。
「シングルサインオンによって、アカウント作成の障壁が下がったことで、Cacooを使っていたユーザーが新たにTypetalkも試す、というようなサービス間のシームレスな行き来が可能になりました。さらに、新規アカウントを一つ作成するだけで、三つのサービスの利用開始・停止ができるので、アカウント管理者の手間もだいぶ省けたと思います」
(NulabAccount発起人/初期開発者 縣)
NulabAccountは、Cacoo、Typetalkがすでに連携しています。Backlogについても、一部機能で連携をしていますが、より密な連携ができるように今後進めていく予定です。
シングルサンイオンはNulabの社内システムにも活用されています。今後その技術を活かして、外部のサービス向けて、よりオープンな機能を開発していくことも考えています。
ヌーラボが課題に対してどう向き合ってきたのか、伝わりましたでしょうか。私たちは、自分たちの課題を解決して、最適な環境にするために必要なことを常に考え、プロダクトを作っています。その上で大切にしているコンセプトは、「オープン」であり、ユーザーが「楽しさ」を感じられることです。今後も、皆さまのチーム内のコミュニケーションを活性化させて、より働くことが楽しくなるような、機能やサービス、活用事例を発信していきますので、どうぞお楽しみに!