目次
はじめに
弊社では評価制度の見直しを行い、ミッショングレード制を採用することになりました。ミッショングレード制は、役割に応じたミッションを定義し、そのミッションを達成するために期待する行動特性や成果をコンピテンシーとして明確化することで、能力の有無ではなく、実際にそれを行動に移している人や貢献度が高い人を評価する制度です。
このブログでは、私が所属するサービス開発部において、コンピテンシー作成をどのように進めたかを紹介します。
コンピテンシーとは
コンピテンシーは、職務や役割において優れた成果を発揮するための行動特性を指し、人材育成や評価などに活用されています。詳細な背景や説明については、引用元であるカオナビさんの コンピテンシー(competency)とは?【意味を簡単に】 が非常に参考になりますので、ぜひご参照ください。
コンピテンシーを定義することになった背景
これまでの評価制度に関する社内からの意見や、役員・部長陣がこれからのヌーラボに期待することなどを考慮し、ミッショングレード制の導入について慎重に議論を重ね、決定しました。ミッショングレード制では、各グレードに求められるミッション(役割)を明確化し、それぞれのミッションへの貢献を評価するためのコンピテンシーを作成する必要があります。
ヌーラボでは、全社員に求める共通のコンピテンシーに加えて、各部署ごとに必要なコンピテンシーを定義する必要がありました。さらに、ヌーラボではマネージャー、エキスパート、スタッフなどのグレードが定義されており、それぞれのグレードにするコンピテンシーの作成が必要です。
私はサービス開発部内の1つの課の課長をしていますが、今回サービス開発部では、部長からの提案により、コンピテンシーの作成は実際にメンバーの評価に携わる課長陣が中心となって進めることになりました。
コンピテンシー定義の流れ
弊社としては初めての制度の導入となり、手探りの状態から進めていくことになりました。部署ごとに作成方法が異なったようですが、私の所属する部署でどのように進めたかを紹介します。
制度の導入目的を把握する
人事や部長陣とのヒアリングを行い、なぜ現在の評価制度を変更する必要があるのかを把握しました。また、新しい評価制度に関する説明会の資料なども事前に共有してもらい、それを参考にしながら本制度についての理解を深めました。さらに、疑問点や不明な点があれば会社に対して質問し、理解を深めていく取り組みを行いました。
評価項目を定義する
ミッション、評価項目、コンピテンシーは以下のような関係になります。(評価項目についてはコンピテンシー項目とも呼ばれることもありますが、本記事では評価項目と統一します。)
各グレードには、すでに役員や部長陣を中心にミッションが定義されていました。しかし、それに紐づく評価項目やコンピテンシーについては私たち自身で考える必要がありました。評価項目は部長に定義を依頼することで、ブレが少なくなると判断し、依頼しました。以下は一部ですが、「戦略的な思考」「意思決定力」「マネジメント」「企業文化のリード」など、20を超える項目が出てきました。
評価項目に紐づくコンピテンシーのアイデアを各自で出す
一般的には、コンピテンシーは5個程度が適切とされています。そこで、まずは定義された評価項目に対してコンピテンシーのアイデアを出すことで、各評価項目の重要性が明確になると考えました。課長全員が個人ワークを行い、評価項目に関連する行動特性などのアイデアを洗い出しました。
たとえば、評価項目が「教育の貢献」である場合、実際に社内で教育に貢献しているメンバーの行動を参考にしました。「あの人ってこういう行動を取っていて、かなり社内教育に貢献しているよね」という具体的な行動をコンピテンシーのアイデアとしてリストアップしていきました。
定義されていた20個を超える評価項目について、十分な数のアイデアが出てきたため、比較検討することができました。
コンピテンシーのドラフトを作成する
出されたアイデアをまとめ、コンピテンシーとして文章化する必要がありました。しかし、全員で集まってその場で作成するのは時間的にも厳しく、また10名近くのメンバーで確定まで持っていくのは逆に難しいと考えました。一方で、誰か一人に依存すると良いコンピテンシーが作れない可能性もあります。
そこで、コンピテンシーのアイデアは揃っていたため、評価項目をいくつかに分類し、それぞれの分類ごとにチームを作成しました。そして、各チーム内でコンピテンシーのドラフトを作成することにしました。前述のアイデアの中で重複する内容や特に重要な要素を各チームで確認し、ドラフトを作成していきました。
詳細は書きませんが、例えば評価項目が「戦略的思考」である場合、「課題を分析し、短期的な解決策と長期的な解決策を的確に使い分けている」「サービスの持続性を考慮した提案をしている」といったコンピテンシーを作成していきました。
確認作業
各チームが作成したコンピテンシーを持ち寄り、大きなずれがないか、評価すべき行動特性が抜け落ちていないかなどを確認しました。また、重複したコンピテンシーが他の評価項目で表現できている場合は統合や削除を行い、調整しました。
その後、複数のメンバーが書いたコンピテンシーには書き方のばらつきがあったため、統一感を出すために1人のメンバーが清書作業を行いました。
配点を決める
マネージャーのグレードは上位から順にM1、M2、M3のように細かく分けられており、それぞれのグレードに対して同じコンピテンシーが使用されますが、配点の割合が異なります。例えば、M3ではマネジメントの重要性を高く設定し、ビジョンの提示の重要性を低く設定しました。一方、M1では逆にマネジメントの重要性を低く設定し、ビジョンの提示の重要性を高く設定しました。
この配点の違いには、M1ではマネジメントの能力が既に確立されていることを前提とし、よりビジョンの提示能力を重視する意図があります。このような観点で詳細な議論を行い、配点を決定しました。最終的には部長による全体の確認を経て、コンピテンシーの作成が完了しました。
今後の改善点
今回は時間的制約があったため、社内で多くの人がハイパフォーマーと捉えているメンバーの行動を思い浮かべながらコンピテンシーを作成しました。しかし、ハイパフォーマーと直接対話することで、そのメンバーが持つ行動特性や思考プロセスをより良い精度で見つけられるのではないかと感じました。次回のコンピテンシーのアップデートでは、複数名のハイパフォーマーに対してヒヤリングを重ねるプロセスを欠かさないようにしようと思っています。
最後に
コンピテンシーの作成は率直に言って非常に困難な作業でした。作成したコンピテンシーがメンバーに納得感を持って受け入れられるのか、ミッションの達成にはより適したコンピテンシーがあるのではないかなど、不安はつきません。しかしながら、今後のコンピテンシーの運用のほうがより大変であり、重要になってきます。コンピテンシーに基づいたメンバーとの定期的な面談を通じて、実際にメンバーやチーム、組織の成長に繋げなければ意味がありません。また、定期的にコンピテンシーを見直し、現状に即したものに変化させていくことも必要です。もし面談などでメンバーがコンピテンシーに違和感を抱いている場合は、しっかりとヒヤリングをし、調整をしていく必要があります。まだこれから運用が開始したばかりで、見えていない部分も多々ありますが、しっかりとこの制度に向き合っていきたいと思います。