こんにちは。ヌーラボ 代表の@hsmtです。最近、株式会社 ヌーラボ は積極的に採用活動を行なっています。2016年4月から、国内では20名のヌーラバーが新しく加わり、2017年3月末時点では53名と、ざっくり1.5倍の人数になりました。国外のヌーラバーも加えると、総勢70名くらいの人数になり、今までにはないスピード感でひとが増えています。そして、現在も加速していっています。
ひとが増えるとできることが増え、ユーザーさまのより多くの期待に応えることもできます。また、これまで手が回しにくかった、社内のアレコレにも着手でき、組織としても一段と成長が望めます!
・・・というのは、上手くいった場合の話で、実際には、ひとが増えるに従って徐々に組織が機能しなくなる話もよく伺います。プロジェクトマネジメントをやっている方だったら分かるかもしれませんが、人数が増えることは一概に良いことずくめ!とは言えないのです。
なぜ、行動規範が必要なのか
チームや企業などの「組織」にひとが急に増えていったときに「規定」だとか「規則」だとかの整備が必要になってきます。それはなぜか?
規則の数や細かさは、どの程度の「性善説」で規則を作っていくかで変わります。規則を作る側のひとたちが「みんな悪意を多く持っている」とか「みんな義務を全うせずに権利を主張する」という、なんだかネガティブな前提で規則を作ると、規則の数は増え、細かなことまで定義していなくてはいけなくなり、途端に窮屈で支持されない規則になっていきます。
大枠の方針を決め、シンプルな規則を作るように注意を払わないと、「性善説で軽い規則を作ろう」と思っていたのに、思ったよりも詳細で身の丈に合わない「どっしりとした重厚な規則」を作っていく方向に堕ちていきます。
そんな大変なことになる前に、ルールの基礎となる「文化(カルチャー)」を行動規範として定義する必要があります。さらに、社内でそれを共有したり浸透させたりすることで「性善説」に根ざした組織を実現できて、軽量な規則でも大きな効果を期待できます。
また、行動規範がしっかりと浸透していれば、たとえ予想外の問題が発生したときでも、行動規範をベースに、社員全員が自律的に判断できるため、素早い判断につながります。だからこそ、社員数がそこそこ多くなってきた企業の経営層は、「行動規範」や「行動指針」の作成に取り組みます。対外的にもカルチャーが強固な企業は良い会社だと判断されるためです。
ヌーラボという「業務用のコラボレーションサービスを作っている企業」という立場からの視点ですが、「行動規範」は提供するプロダクトの背景にある哲学になります。例えば、「楽しさが大事」という企業文化から生まれるソフトウェアは「楽しさが大事」という哲学をもつソフトウェアになり、「楽しさが大事」という価値を提供します。
出来上がった行動規範「 NUice Ways 」
行動規範の刷新をする活動を通して生まれた行動規範は、社内投票の結果「 NUice Ways (ヌイス・ウェイズ)」と名付けられました。「NUice」というのは、社内の造語で「Nice」と「Nulab」を混ぜたような単語です。そして、決まった中身は以下です。
まず、「行動規範」を作るグループをつくった
今までは取締役陣で行動規範を作っていましたが、今回も取締役陣で行動規範を作って運用に回すという流れにすると、社員側はトップダウン型の決定をきつく思うのでは?という懸念がありました。それに、なんだか説教臭くなります。
ひとが増えて、そのために規則などが増えたとしても、組織としては、ダニエル・ピンクさんの著書「Drive(モチベーション3.0)」にも書かれている「内的モチベーション」を高めるための要素(やる気を構成する3要素)である「自律性」「熟達」「目的」を追い求められる仕組みづくりや、環境づくりをしたいと思っています。それに「自律性を高めるためには、自分たちで自分たちの行動規範を決めてもらったほうがいいのでは?」と感じたのです。
なので NUice Ways は、経営層(会社役員)は参加せずに、社内からピックアップされた数名の「Bridge(ブリッジ)」と呼ばれる行動指針を推進していくメンバーを中心に作成されました。もちろん、「Bridge」という名前も投票で決めました。
ファシリテーターにも参加してもらった
行動規範のアップデートの活動自体に参加せずに、あくまでも中立的な立場から活動の支援をしてくれる存在が必要と考え、合同会社こっからさんにファシリテーターとして加わってもらいました。
代表取締役としての僕(橋本正徳)は、彼らと、まだ入社数ヶ月の人事のアンジェラと一緒に「行動規範を作る仕組みを作る」という作業だけに加わることとしました。とはいえ、殆どこっからさんと、アンジェラにおまかせしっぱなしでした。
一度だけ、「橋本さん、最終的に出てきたものに対して、ちゃぶ台返すようなことないですよね?」みたいな確認がありましたが、採用過程においてカルチャーマッチした人たちばかり採用していますし、そして半数が古株といったメンバーが「Bridgeメンバー(行動規範を作るグループ)」という構成だったので、信用しておまかせできる状態でした。
各オフィスでワークショップ
行動規範を推進するBridgeメンバーとファシリテーターを決めた後は、「社員みんなで作る(残念ながら、今回は国内のみですが)」「社長はあまり口出ししない」「今ある良いところを凝縮して言語化したものにする」という方針で、東京・京都・福岡の各オフィスでワークショップを行いました。この時点では、誰がBridgeなのかは本人たちにも内緒にしていました。
ワークショップにて、みんなが話し合ったのは、以下の2点です。
- ヌーラボが大事にしている「Fun」「Creative」「Collaboration」とは?
- ヌーラボの行動指針にはどんな要素が入ってたらいいと思う?
ワークショップを通じて、以下のような意見が出たそうです。
- フリーダム。自由でなければヌーラボじゃない。
- 無駄を排除してしまったらヌーラボらしくない。自由も無駄も大事。
- 昔と大きく会社は変わったけど、「昔の方がよかった」とは思わない。
実は、5年くらい前にも今回のようなワークショップをヌーラボで頻繁に行なっていました。当時のワークショップに参加した古株の社員は、今回のワークショップを体験したことで、こういう活動もヌーラボのカルチャーの一部だと思い出したそうです。
また、各ワークショップを開始する際に、ヌーラボ代表として僕の直筆の手紙を読んでもらいました。ITが発達し、なかなか直筆で手紙を書く必要のなくなってきた昨今ですが、このときばかりは、「字は上手であれ」と思いました。
茅ヶ崎での合宿で、各拠点のワークショップの結果をもとにした行動規範を導き出す
各拠点でのワークショップで、社員全員の意見を出したあと、Bridgeメンバーを茅ヶ崎に集めて、合宿をしてもらいました。それぞれの拠点のワークショップで話題に上がった内容を、Bridgeメンバーにまとめてもらい、行動規範を生み出していく作業です。
言葉を紡ぐ、非常に繊細な作業になったようです。些細な言葉の選び方に対して意見が飛び交います。「てにをは」はもちろんのこと、例えば「リーダー」と表現するか「係」と表現するか?ひらがなで表現したほうがいいか、漢字で表現したほうがいいか?など、非常に細かな議論が展開されたそうです。
また、合宿の始まりと中頃に「会社をどのような気持ちで始めたのか」「海外へ進出して、海外ではどのような環境で仕事をして、なにを感じているのか」など、会社役員からのインプットも少しだけ行いました。
Bridgeのメンバー構成は「入社したばかり」「堅実家」「ロマンチスト」「やってみて考える派」「激ゆる系」「スクラムマスター」など、キャラクター構成はバラバラですが、忙しい仕事の合間を縫いながらも、「みんなの行動規範を作る」というゴールを目指して、全力で取り組んでもらいました。
行動規範「NUice Ways」の共有
最後に、出来上がった NUice Ways を社内オンラインカンファレンスで共有しました。ともすれば硬くなってしまうような行動規範の話も、Bridgeメンバー各々で工夫をした発表となりました。まさに「楽しさを広げよう」という姿勢で取り組むことができたのではないのかな、と思います。
僕がみんなとこれから挑戦していきたいこと
NUice Ways を作ることが目的ではなく、それを社員一人ひとりに理解してもらって、日々の意思決定に活かしてもらい、業務効率をあげていくことが目的になります。もちろん、「仕事をあそぼう」の項で「余裕と無駄から、想像を超える仕事が生まれる」という考え方も持っているので、単なる業務の効率化ではなく、もっと大きな視点での革新性のある業務の効率化を狙っていけたらと考えています。
今回は、半分実験的だったこともあり、日本のヌーラバーだけで行なったのですが、今後 は、 NUice Ways をアップデートしていく営みを、日本以外の台湾やニューヨークのヌーラバーと一緒に取り組んでいきたいと思います!