あなたのチームには働く上での小さな約束事はありますか?
業務規定のようなカチッとしたものではなく、チーム内だけの、日々そばで働くメンバー同士で交わした約束事。これをワーキングアグリーメントと呼びます。
チームの皆が気持ちよく、安心して、そしてチームの存在価値に向かって働くために必要なものだと私は考えています。
このブログではワーキングアグリーメントがチームに及ぼす影響と実際に私たちが作成した手順を書きます。
チームで働く方々のヒントになれば幸いです。
目次
日々ちょっとした気後れや迷いを感じていませんか?
ふとした瞬間に生じる小さな迷い。例えば、
- Aさんに確認したいことがあるけど、今ものすごく忙しそうだ。メンションしてもいいのだろうか……
- 確認を依頼されていた内容は一通り問題はなさそう。でもどうしても細かい点が気になってしまう。指摘したら面倒な人だと思われないだろうか?
- ミーティングが白熱しているけど、もう疲れたから休憩したい。でもちょっと休みましょうって言いづらいなぁ。
上記のようなことは誰でも一度は身に覚えがあるはずです。
チームで働く以上他者への気遣いは大切ですが、ちょっとした気遣いが積み重なり業務の進行に支障が出るようでは本末転倒ですよね。
今回取り上げるチームでも同様の迷いを抱えるメンバーがいました。そして今、そのチームのワーキングアグリーメントには以下の内容が記されています。
ワーキングアグリーメントは「チームが日々大切にしていることを皆で言語化し合意したもの」です。ルールで縛るのではなく、気後れや迷いをなくし本来集中すべき業務に向けて働きやすい環境を整える、というイメージを持ってください。
またワーキングアグリーメントは新しく入ってきたメンバーがチームに溶け込む手助けにもなります。また、チームメンバーが変わる際には内容の見直しも重要です。これについては後述します。
フルリモート勤務は小さな迷いが致命傷(になることがある)
私たち株式会社ヌーラボの社員は基本的にはフルリモート勤務。コミュニケーションの大半はテキストです。そのため、対面では感じることができた「悩んでそうだな」とか「作業が止まっているっぽいな」といった些細な雰囲気をつかむことが難しいと思うことがあります。それは毎日のようにオンラインミーティングをしていても同じです。
「このシステム動作は怪しい気がしたけど言いそびれて、そのまま忘れてました」と、バグ発見時のメンバーの発言。
その時仮に「怪しいと思ったことは遠慮なく発言しよう。勘違いだったとしても発信してくれたことに感謝しよう」という文化がチームで掲げられていれば結果は違ったかもしれません。
ほんの小さな気後れや迷いが後々大きな問題へと発展するなんてことは、どこにだってある話です。ただフルリモートだとメンバーの機微を察することが対面よりも難しい。だから私たちのワーキングアグリーメントには互いのことを労り、より分かり合えるような内容も含まれています。
現在私が所属するチームのものを一部記載しますと、
- メンションは気軽にいつでもしよう
- カレンダーで参加する打ち合わせは「はい」にして、他の人からわかるようにしよう
- ご飯をちゃんと食べましょう(仕事を優先してはいけません)
小学校の壁に貼ってそうな内容ですよね。
でも意外とこんな小さな約束事がチームで働く上での安心感につながっています。
さあワーキングアグリーメントを作ってみよう
ここからは私が以前所属していた決済チームでの作成手順を紹介します。
私たちは皆で集まって作業しましたが、オンラインでも実施可能です。
以下の手順で行います。
- チームの目標と組織のチームに対する期待を読み合わせる
- 以下を皆で書き出す
- どんなチームでありたいか
- 働く上で大切にしたいこと、約束事
- 困っていること、解決したいこと
- それぞれ自身の書いた内容について発表する
- ワーキングアグリーメントに含めたいことを集める。新たに書き出す
- 清書!完成!
1. チームの目標と組織のチームに対する期待を読み合わせる
まずは皆で所属する部や課の目標や方向性を確認しましょう。
チームの約束事だからと何でもかんでも自由に決めていいわけではありません。
例えば、お金を扱う業務のチームが「バグや間違いは気にしないで、速度優先でどんどん挑戦的リリースをしよう!」とチームで合意したら、業務に支障が出るでしょうし、組織全体にも悪い影響を与えるでしょう。
約束事はチームの方向性と一致している必要があります。もし、チームの目標がない場合は先に目標を作成しましょう。
ワーキングアグリーメントはチームが目標に向かう中で、皆が気持ちよく働くためのものです。チームが目指すべきところが定まっていないと、その約束がチームのあるべき方向性を阻害する可能性があります。
チーム目標の作成方法については次回のブログで書きます。お楽しみに。
2. 以下を皆で書き出す
- どんなチームでありたいか
- 働く上で大切にしたいこと、約束事
- 困っていること、解決したいこと
大きな紙と付箋、もしくはオンラインホワイトボードツールを使用します(私たちはCacooを使用しました。とても便利!)。
下図のように枠を設けて各人が自由に付箋を貼ります。可能であれば宿題として事前に記入しておいてもらうのがよいでしょう。
書き方のコツとしては、さあチームのルールを新設しよう!と頭をひねるのではなく、日々何気なくやっていることや、小さな気遣いや迷いを言語化するイメージで取り組むといいでしょう。
人が集まると自然と暗黙のルールが発生します。チームの文化と言っても良いでしょう。よい文化だと感じるものは残し、モヤっとするものはこれを機に話し合うのがよいでしょう。
3.それぞれ自身の書いた内容について発表する
各枠毎に自身の書いた内容を発表します。大切なのは一方的な意見発表会にならないように「なぜそう思う?」や「具体的にどんな時?」と対話を促進し、それぞれの意見の背景をチームの皆が認識できるように務めることです。
メンバーの話を聞くことで新たな意見がでた場合は追加で付箋を貼りましょう。共感する付箋にはハートのシールを貼ったりして、共感を示すのもいいですね。
ファシリテーターがいた方が進行しやすいので、チーム外の人にファシリテーションをお願いすることもいいでしょう。
4.ワーキングアグリーメントに含めたいことを集める。新たに書き出す
メンバーの発表が終わったら、ワーキングアグリーメントに入れたい内容を集めます。新たな枠を設けて、貼り出された付箋を移動させたり、新たに付箋を書き出します。
意見が集まったらチームで合意する内容について話し合います。ワーキングアグリーメントとして明文化したい付箋は残し、そうでないものは外します。
チームの目標、チームが大切にしていることを思い出しながら話してください。繰り返しになりますが、チームの皆が気持ちよく、安心して、そしてチームの存在価値に向かって働くための小さな約束事を作る場であることを念頭に置いてください。
厳格なルールを設定したり、ひとりの意見を皆に強要する場ではありません。
5.清書!完成!
意見がまとまったら清書して、チームがいつも見る場所に保管しましょう。オフィスの壁に貼り出したり、Slackチャンネルの概要欄に残してもいいでしょう。
私たちはBacklogのドキュメントに記載しています。
常日頃から皆で決めた約束を意識することが大切です。
完成したものはこちらです。
チームの目標「インシデントゼロを目指す」に沿った内容になっています。
このドキュメントは、私たちのチームが共通の価値観をもち、気持ちよく仕事を進めていくための「約束ごと」をまとめたものです。
- 品質を最優先しましょう
スピードだけではなく、長期的な視点で正確さと品質を大切にしていきます。そのために、仕様の確認やレビューは丁寧に行いましょう。 - 新しいことに挑戦しましょう!
未経験の領域にも「まずはやってみよう」の気持ちで挑戦します。失敗はチームの学びとして、みんなで成長していきましょう。 - 助け合いの精神を大切に
困ったときは、一人で抱え込まずにチームを頼りましょう。お互いにサポートし合える関係を築いていきます。
- 未来のための読みやすいコードを
未来の自分や仲間が困らないように、読みやすさを意識したコードを書いていきましょう。 - 技術的負債は計画的に解消!
緊急対応などで生まれたコードは「技術的負債」として認識し、計画的にリファクタリングする時間を取りましょう。 - ドキュメントは完璧よりまず完成
知識をチームで共有するために、まずは情報を残すことを優先します。完璧なドキュメントを目指すより、まずは作ってみましょう。
- 質問を歓迎する文化をつくりましょう
わからないことは、いつでも気軽に質問できる雰囲気。質問される側も、いつでもウェルカムな姿勢を心がけます。 - 気づきは気軽に共有しよう
業務上の小さな気づきや違和感は、Slackのチャンネルで積極的に共有しましょう。それがチームを助けることもあります。 - ミーティングは効率的に
集中力を保つため、ミーティングは25分または55分を基本としましょう。⏰ - 意識して休憩をとろう
1時間を超えるミーティングや作業の際は、適宜休憩を挟んでリフレッシュすることを忘れないようにします。☕
- チームの相互理解を深めよう
チームの結束力を高めるため、定期的に業務以外のことも含めてコミュニケーションを取る機会を持っていきましょう。 - 定期的にチームで話す時間
最低でも半年に一度、そして新しいメンバーが加入したタイミングで、チームについて話し合う時間を設けます。
このワーキングアグリーメントは、チームの成長に合わせて、みんなで継続的に見直し、より良いものに育てていきましょう!
ちなみに現在私が所属するチームのものはもっとゆるいです。
私は面倒くさがりなので、いちいち勤務の開始終了を報告しない等やらないことを明記しています。
- 勤怠について
- 朝と帰りの挨拶とかはしなくていい
- お休みの場合はカレンダーに登録しよう
- カレンダーで参加する打ち合わせは「はい」にして、他の人からわかるようにしよう
- 体調悪い時は積極的に休もう
- 無理して働くのはやめよう
- 大体働いてる時間の中で、連絡がつかない場合は連絡を入れよう
- コミュニケーションについて
- メンションは気軽にいつでもしよう
- ミーティングについて
- ミーティングは25分刻みで登録しよう
- ミーティング間に最低5分の休憩を取ろう
- ジムや買い物に行きたいから、ミーティング13時開始は避けよう
- 開始・終了時間を守れるように設計しよう
- 目的・相談事項・ゴールなどを事前にまとめておこう
- カレンダーのメモに書いておこう
- 議事録はみんなで書こう
- ミーティングは25分刻みで登録しよう
- その他
- 社内の人と積極的に交流しよう
- ご飯をちゃんと食べましょう(仕事を優先してはいけません)
定期的な見直しがとっても大切
ワーキングアグリーメントは一度完成させたら終わりではありません。定期的に見直してチームと一緒に育てていくことが大切です。
例えば以下のようなタイミングでの見直しがおすすめです。
- 三ヶ月毎
- 新メンバー加入時
- 業務内容が変化した時
チームは常に変化します。 新しいメンバーが入ったり業務内容が変化すれば、以前は合意した内容が今のチームには合わなくなることもあります。
特に新しいメンバーに対しては、これまでのチーム紹介として効果は発揮しますが、必ずしも新メンバーの考えと合致するかはわかりません。内容について話し合い、アップデートしましょう。また、目に見えた変化がチームになくとも定期的に見直すことをおすすめします。
ちなみに、先日業務にかかりっきりでお昼ご飯を食べていないメンバーがいたのでチームに約束事がひとつ増えました。
- ご飯をちゃんと食べましょう(仕事を優先してはいけません)
これくらいの気軽さで小さな約束事を積み重ねて、チームがより働きやすくなっていけたらいいなと考えています。
あなたのチームにも、まだ言葉にされていない「思いやり」や「モヤモヤ」がたくさん眠っているはずです。ぜひ一度、メンバーと膝を突き合わせて小さな約束事を作ってみてください。
さいごに
私たちが実施した作成方法を紹介しましたが、ワーキングアグリーメントについてはこれが正しい!この方法でやるべき!と言ったものはないと考えています。チームの状況やメンバーの性格、関係性を考慮して作成方法自体から話し合ってみるのも面白いです。
私はチームの約束事を皆で考える過程にこそ価値があると信じています。
自分たちの文化を己の手で明文化するのってなんだか素敵じゃないですか?
仕事の幸福感や楽しさって、結局のところそばにいるメンバーとの関係性じゃないのかなってつくづく思う次第です。
このブログがどなたかの役に立つのであればとても嬉しく思います。
弊社のブランドメッセージである“このチームで一緒に仕事できてよかった”を世界中に生み出していく。” の願いを込めて。



