みなさん、はじめまして!
7月からPEaS(ピーズ)チームに異動しました、松江です。PEaSは Project Empowerment and Success の頭文字で、「プロジェクトを成功に導く支援をする」ために、部署やチームの枠を越えて伴走する、社内横断のサポートチームです。
PEaSは今年発足されたチームで、これまでメンバーはヌーラボ入社以来プロジェクトマネジメントを推進してきた中道一人でした。そこに今回、今までサービス開発部でCacooのテクニカルサポートを担当してきた、私、松江が新たに加わりました。
そんな新体制の始動にあたり、チームの発案者でもあるサービス開発部長の吉田にも参加してもらい、初めてオフラインで集まる「チームギャザリング」を実施しました。
この記事では、新設チームの私たちが、どうやってお互いの仲を深め、一つのチームになっていったのか、具体的なワークショップの手順や成果物を交えながら、その全記録をご紹介します。
目次
1日目:相互理解とチームの能力の可視化
初日は、チームの基礎となる相互理解の深化と、我々が「何者」で「何ができるのか」を可視化することにフォーカスしました。
Work 1:「偏愛マップ」による価値観の共有
教育学者である齋藤孝氏が提唱する『偏愛マップ』を参考に、個人の内面的な価値観を共有し、表層的な仕事上の関係性を超えた相互理解の土台を築きます。
- 目的:仕事の顔だけでは見えない個々の人柄を知り、相互理解を深める
- 所要時間:約25分(準備10分 + 3名 × 発表5分)
- 手順:
- 事前に用意した30の質問テーマ(例:「落ち着く場所・ワクワクする場所」「これだけは譲れないマイルール」など)から、各自が好きなものを9つ選択する
- Cacoo上に用意した3×3のマスに、選んだ質問と回答を記入する(10分)
- 各自が記入内容を発表し、他のメンバーはそれに対して自由に質問や感想を伝える(各自5分程度)
- ルール:心理的安全性を確保するため、「否定しない」「最後まで聞く」「詮索しない」を徹底する
- 成果物:各自の価値観や人柄を3×3のマスで可視化した、個別の価値観マップシート
某メンバーが実際に作成したマップシート。自分と同じ価値観、異なる興味、どの回答も「もっと知りたい」が詰まっていました。
やってみた感想
最初のワークでは、各自が自分の好きなことやこだわりを「マップ」の形にまとめて語り合いました。仕事では話す機会の無い互いの価値観についてさらけ出すこのワークでは、「否定しない」「無理に話さない」「詮索しない」といったルールを設けることで、心理的安全性の確保に努めました。
BGMが流れるリラックスした雰囲気の中、前衛的なアートへの興味、努力し続ける父親への尊敬、特定の文房具への強いこだわりなど、仕事の顔だけでは見えない多様な個性が共有され、互いの価値観や人柄への理解が深まりました。特に、松井秀喜選手の「自分でコントロールできることに集中する」という考え方や、「知識は人を豊かにする」という大切にしている言葉、「休みやすい環境」という理想の働き方など、仕事観に繋がるテーマも共有されました。
Work 2:理想のチーム関係の言語化
チームとして目指す関係性の理想像を定義し、メンバー各自の貢献意識と相互評価を明らかにします。このワークは3つのステップで構成されています。
- 目的:チームとして目指す「関係性の理想像」を言語化し、メンバーの強みを明らかにする
- 所要時間:計画 45分(各Step10分 + バッファ)→ 実績 約1.5時間
- ルール:素直に書く、誰が書いたかわかる状態で共有する
- 成果物:「理想のチーム像」「各自の貢献」「相互評価」の議論を、チーム全員で付箋を使い共同編集したCacooシート
Step①「どんなチームにしたいか」
- 手順:
- 自分が思う「こんなチームでありたい」というキーワードや雰囲気を付箋に書き出す(5分)
- 書いた内容を一人ずつ読み上げて共有し、気になる点について質問する(5分)
Step①の作業シート。実際の作業時は付箋にユーザーアイコンと名前を表示し、誰が書いたかわかるようにしました。
Step②-A「自分がチームにもたらせると思うこと」
- 手順:
- 「自分が今後チームにもたらせると思うこと」を付箋に書き出す(5分)。このとき、「できること」だけでなく「こうありたい」という願いでも良いとしました
- 書いた内容を一人ずつ読み上げて共有し、気になる点について質問する(5分)
Step ②-Aの作業シート。それぞれの立ち位置が明文化され、相互理解が深まります。
Step②-B「お互いのよいところ」
- 手順:
- 他のメンバーに対して「いいなと思っているところ」を具体的に付箋へ書き出す(5分)
- 書いた内容を一人ずつ読み上げ、本人に伝える形で共有する(5分)
Step ②-Bの作業シート。褒めるのも褒められるのも、少し照れ臭くも楽しい時間でした。
やってみた感想
次に、「お互いのことを少しずつ知り、これからどう一緒に働いていきたいかを考える」ことを目的としたワークショップを行いました。特に印象的だったのは、「不完全な状態を見せることの重要性」についての議論です。完璧な状態になるまで抱え込むのではなく、早い段階で相談し合う方が合理的だ、という認識を3人で共有できたことは、今後「プロジェクトをリードする人を孤独にしない」という私たちのミッションを遂行する上で、大きな一歩だったと感じています。
フィードバックの時間では、「抽象度の高い思考」、「冷静・客観的な視点」、「実行力や仕組み化」といったそれぞれの強みを、お互いの言葉で再認識することができました。大人になると他者からはっきりと褒められる機会はあまりないので照れ臭い気持ちもありましたが、素直に嬉しい、なんだか心が満たされるような、貴重な体験でした。
相互理解や対話を重視してあまり時間を気にせず進めたこともあり、実際には予定の倍程の時間をこのワークショップに費やしてしまいました。
Work 3:チームスキルマッピング(と、その失敗)
チームが保有するスキルセットを客観的に評価し、役割分担や今後の学習計画のヒントを得ます。
- 目的:チームに必要なスキルと各自の習得状況を客観的に把握する
- 所要時間:40分
- ルール:認識合わせを優先し、納得するまで話し合う
- 手順:
- 「PEaSチームに求められるスキル」を各自が付箋に書き出す(5分)
- 類似スキルをグルーピングし、スキル項目を定義する(10分)
- 定義したスキル項目に対し、以下の評価基準で各自が習得レベルを自己評価する(5分)
- ◎:人に教えられる、指導できる
- ◯:一般的な知識がある
- △:サポートが必要
- ⇧:習得希望
- -:未習得
- 完成したマップを元に、チームの強みや補うべき点を議論する(20分)
- 成果物:(未完成)スキルマップのスプレッドシート
スキルマップ作成途中の作業シート。この雑然とした状態から 、『「スキル」の定義や粒度』という課題に直面し 、「チームにとって本当に可視化すべきものは何か」という本質的な議論へと繋がりました。
やってみた感想
1日目の最後に、チームのスキルを可視化する「スキルマップ」作成に挑戦しました。しかし、手順2の「類似スキルをグルーピングし、スキル項目を定義する」の時点で、「『ファシリテーションができる』とは、具体的にどういう状態を指すのか?」といった、スキルの粒度や定義を定めること自体の難しさに直面しました。
この結果、マップを完成させることを中断し、「我々が本当に可視化すべきはスキルセットか、それとも『業務一覧』ではないか?」という、より本質的な議論へと転換しました。このワークの最大の成果物は、完成したマップではなく、「チームが本当に可視化すべきものは何か」という問いそのものでした。
1日目の終わりに:非公式な対話の価値
1日目のワークショップ終了後には懇親会を開きました。仕事の話から離れてリラックスした雰囲気で雑談を楽しむことは、ワークで生まれた相互理解を、より個人的で強固な繋がりに深める上で非常に効果的でした。
2日目:チームが向かうべき方向性の探求
初日の学びを踏まえ、より具体的なチームの未来と活動計画について対話しました。
Work 4:ロードマップ作成(よりも対話を優先)
初日の議論で形成された相互理解をベースに、チームの今後の活動計画を策定します。
やってみた感想
Work 3の経験から「完璧なアウトプットよりも、そこに至る対話のプロセスが重要である」と学んだ私たちは、2日目のロードマップ作りでもその学びを活かしました。
時間内にロードマップを「完成させる」タスクを完了させることよりも、顔を合わせている貴重な時間を使い、チームのあり方についてじっくり対話することを選択。未完成のロードマップは、このギャザリングで深まった信頼関係を元に、後日オンラインで更に良いものにしていくことになりました。
総括:私たちが2日間で見つけたもの
この2日間のギャザリングにおける最大の成果は、完成したドキュメント群ではなく、お互いの人間性への深い理解と、心理的な信頼関係でした。
うまくいかないことを許容し、計画の変更を恐れず、常に「我々にとって今、最も重要なことは何か」を対話し続けたプロセスこそが、私たちのチームの土台を築きました。最後にメンバー同士でがっちりと交わした握手は、この2日間で確かに生まれた信頼関係の証です。
PEaSは、まだ始まったばかりの小さなチームです。このギャザリングで得た信頼関係を胸に、私たちが大切にしたい「プロジェクトをリードする人を孤独にしない」という想いを実現するため、社内のプロジェクトと、そこで挑戦する人たちの一番の味方になれるよう、活動していきます。
本記事で紹介したワークショップが、この記事を読んでくださった皆様のチームビルディング活動の一助となれば幸いです。今後のPEaSチームの活動に、ぜひご期待ください。