いろんなスタートアップや起業家向けのイベントに出席すると「グローバル」という言葉を必ず聞くくらい、日本企業のグローバル展開というのは話題になっていると感じます。また、先日、お台場で行われた Slush Asia という起業家向けのイベントでは、内容も進行も英語だったとのことで、僕らのような業種は確実に英語が必要になっています。また、大勢の前で英語でプレゼンテーションする機会も多くなってきていると思います。
僕は、ありがたいことに、これまでにシリコンバレーで2回、ロンドンで1回、台湾で5回くらい、プレゼンテーションをさせていただきました。その他、僕以外にも、弊社の田端や、縣、染田、山本、平山なども、海外にてプレゼンテーションの経験があり、また、Cacooのユーザーミートアップ「CacooUp」は、過去20回ちかく、東京を含めて全世界合計17都市で行っています。さらに、ヌーラボにて年に1回おこなっている「社員総会」は、日本語の分からない社員もいるので英語で行われており、事業のマイルストーンや、チョット先のビジョンなどのプレゼンも英語で行います。当然、各事業担当者も英語で行います。なんだかグローバルカンパニー感があります。
僕の経験だと、シリコンバレーやロンドンは当たり前ですが、台湾も僕らのいるようなIT界隈の人達は英語をペラペラと話す人が多いです。先日おじゃました韓国のイベントでも皆さん英語でプレゼンテーションされていました。だから、英語さえできれば海外の多くの人に向けてプレゼンテーションできることを、身を持って知りました。ただ、『英語さえできれば』の部分が難しく、努力と勇気が必要でした。
さて、今回は「こんな僕でも英語でプレゼンできた」ということで、あまり英語ができない人を対象に、「僕(橋本正徳)は、こうやってやってみている」というニュアンスで、トライアンドエラーで得た経験を共有させていただきます。なので、「こうやればできるよ」という内容ではなく、あくまで現在勉強中の身である僕の体験を通した内容に過ぎませんが、これを読んだ方に少しでも共感いただいて、また、各々のやり方がシェアされていくことを期待して書いてみます。
レッツ、グローバル。
「こんな僕」の英語スペック
とにかく学生時代から英語が苦手で、6年前くらいに受けたTOEICでは230点(平均約580点らしい)くらいで、苦手どころではない状態でした。それ以来受験していませんが、先日、社内で模擬テストしてみたところ500点に及ばないくらいでした。というわけで、TOEICがすべてだとは思いませんが、英語は現在もなお「出来ない方」に属していると思います。
そんなテスト成績が悪い一方で、仕事などを通じて、国内外に英語でしか互いにコミュニケーションできないような友人・知人ができ、日常会話程度であれば、(主にインターネット上でのテキストのやりとりで)コミュニケーションできるようになりました。また、海外のヌーラバー(ヌーラボ社員)もおり、マインド等を伝えるような難しい部類の話は通じたかどうか不安になりますが、ギリギリ業務チックな会話は出来ていると思います。また、マインド的な難しい話題は、日本語で同じことをやっても同じような不安はありますので、英語の問題だけではないかもしれません。
ちなみに、プレゼンテーションの場では、多くの方が弊社のプロダクトに魅力を感じて話を聞きに来てくれる事が多く、僕が上手に話すことが出来ないとしても、気持ちを汲み取って聞いてくれることが多い気がします。ありがたいことです。
とまあ、「書いている割に英語プレゼンができない!」とツッコミを入れられる前の逃げ口上は、以上になります。
英語プレゼンの各パターン
数回の海外でのプレゼンテーションで、幾通りかのやり方で挑戦してみました。大きく分けて3パターンになりますので、それぞれの方法とメリットとデメリットを共有いたします。
1. 原稿を完璧に準備
おそらくですが、このパターンをやっている方が大勢いるのではないでしょうか?原稿(スクリプト)を完全に用意してプレゼンに挑むパターンです。これができれば、伝えたいことを漏れなく言え、まるで英語が出来る人みたいに見えるので、最高の方法だと思うのですが、スラスラと話せるほど練習時間や暗記時間が取れないケースが多いです。
十分に事前の時間が取れないと、原稿を持ち込んで話すことになってしまうのですが、そうすると聞いている人達を見て話せなかったり、やや棒読みでパッションが伝わらなかったり、背伸びして自分の知らない単語を使おうものならプレゼンが途中で止まったりしちゃって、大変なことになります。アクシデントに対応出来ないこともあり、僕がシリコンバレーでピッチ(5分間くらいのショートプレゼン)をしたときは、原稿を暗記して挑んだものの、スライド切り替えが上手く動かず数秒ほどプレゼンが止まってしまい、再開しても暗記した分を要領よくまとめて話す事ができず、タイムオーバーとなってしまいました。
よっぽどの準備ができてないと、原稿に頼りっきりになってしまい、うまくいかないことが多いと思います。僕の場合、この方法は合いませんでした。
2. 原稿を用意せず完全に出たとこ勝負
スライドまでつくり、原稿を用意せずに、そのままアドリブで話してしまうパターンです。僕がよくやるのはこれです。とにかくギリギリまでスライドを揉むので、原稿なんて用意できませんし、練習はスライドを作りながら、ボソボソとその場で思いついたことを喋るくらいです。おそらく、英語が苦手な人が一番やってはいけないパターンだと思います。
このやり方のメリットは、とにかく不格好だけどパッションが伝わるというところだと思います。なにせ、苦手な英語で頑張って自己表現するのですから。また、自分の知っているボキャブラリだけで話すので、比喩表現など、遠回りな言い回しではなく、かなりダイレクトで直球な表現で話ができます(それしかできません)。非常に個人的な技になりますが、もし、夕方以降に行われるようなカジュアルな雰囲気の場でのプレゼンであれば、緊張を解すためにもビールを一杯飲んでおきます。
デメリットとしては、言っておかなければならないことを言い忘れることです。かなり致命的です。また、自己紹介や、自分の製品の概要説明などを、何も見なくてもスラスラと英語で説明できるくらいに、身体に染付けておかないと、結果的にパッションしか伝わらない状況になります。
3. 言っておかないければならないリストだけをプレゼンターノートにメモしておく
1と2の合わせ技なのです。言っておかなければならないことを順番にプレゼンターノートにリストとしてメモしておく方法が、僕には一番しっくりきています。1スライドに2つくらいの量ですが、勢いに任せて英語で話して、ブレスのタイミングなどで我にかえり、プレゼンテーターノートをチラッと見て、話をリストに戻す感じです。例えば、Cacooを説明する場合は、プレゼンテーターノートには以下のようなメモをしていました。
- Cacoo is web-based diagram drawing tool that supports 22 languages.
- Currently, it has been registered by 1.6 million users from around the world.
リストの一番最初の行を話した後は、付け加えで詳細を話したり、思いつき次第では、会場の来客者に手を上げてもらうような簡単なアンケートをやってみたりと、会場を巻き込むような取り組みもできます。状況にあわせて話したあとに、リストの2行目を話すといった感じです。
思いのほか時間を使ってしまった場合などは短縮して話すことも出来ますし、言わなければならないことを言い忘れることもありません。知っているボキャブラリを使って話すので、発音の難しい単語や、自分の中ではイメージを掴みきれていない単語などを無理して使わなくていい(使えない)ので、ある程度はスラスラと話せます。コツとしては、リストに書いておく内容も、自分のボキャブラリの中から選んでおくことだと思います。
僕は、このやり方を一番お薦めしますが、日々、ボキャブラリを増やす活動と、その単語に対するイメージ(単純な日本語訳ではなく)を捉えるためのイメージトレーニングみたいなことをやっておかないといけないと思います。
英語の学習方法
「英語学習は、かれこれ7年ほど地道にやっていってます」と言ったところで、TOEICが230点から500点そこそこくらいに上がる程度しか出来ていませんが。そんな僕がお薦めする「役に立つかわからない勉強方法」は、英語を話す友達をたくさん持つことと、定期的に先生に習うことです。これは、ヌーラボの東京支店で英語を教えてくれているフィリップさんも薦めてくれたやり方なのですが、先生に習うだけだと実践数が足りないし、友達と話すだけだと、間違った英語が訂正されないし、論理的に理解することも難しいそうです。なので、友達と会話して、気付きがあったり、疑問に思ったりした内容を、先生に教えてもらうという循環を作るといいらしいです。
あとは、海外ドラマを英語音声で観るということもやっていました。もちろん、よくわからないので、英語字幕付きで観ることが多かったです。とにかく量をこなしていくと、シチュエーションにマッチしたセリフを覚えることが出来て良さそうです。これは、海外の人が日本語を勉強するときも同じようなやり方をしていることが多く、台湾からやってきたヌーラバーは、キムタクの出演するドラマで学んだので「マジで?!」を連発します。
英語学習補助金制度
ヌーラボでは、業務で英語を使うことが頻繁にありますし、将来的には今よりももっとグローバルな企業になっていくように計画しています。それに加えて、英語ができると、より多くの人とコミュニケーションができ、自分の知らなかった文化なども知ることができて、人生が豊かになるとも考えているため、「英語学習補助金制度」というのを行っています。
英語学習にかかる費用の一部を会社が負担する制度で、業務時間中に英語学習の時間もとっていいようになっています。その制度を利用してオンライン英会話をやる人や、毎週先生に来てもらって教えてもらっている人、DVDや書籍、マンガ(英訳)を購入する人がいて、自分にあった方法でそれぞれ学習しています。
英語学習ができる仕組みと環境があるので、グローバルに活躍してみたいと思われる方は、ヌーラボに参加するのもありなんじゃないかと思います。
最後に
長々と書きましたが、結局は「努力と勇気」が必要で、それさえあればいいんじゃないか?と思うこともよくあります。上手に話せることなんて、母国語でも難しいのですから、第二言語となるともっと難しいし、自分の実力に納得してから挑戦していたのでは、タイミングを見逃してしまいます。
先日参加したスタートアップのコンテストでも、英語を第二言語としている人が一生懸命に話していました。それを聞いていて「おかしい」と思いませんでしたし、聞く側の姿勢次第で理解できるもののようです。上手ではない第二言語を一生懸命に話しているのに、それを笑う人なんてあまりいません。一緒にがんばりましょう!
最後に英語の苦手な僕に友人が言ってくれた言葉を残しておきます。
A wise man once told me that English isn’t the global language. Broken English is.