Outcome Delivery Practitioner研修に参加して、僕が得たもの。

こんにちは、中村です。本記事では、僕がOutcome Delivery Practitionerの外部研修に参加して感じたこと、学んだことのレポートをお届けします。

研修に参加した目的

僕がOutcome Delivery Practitioner研修に参加した目的は「価値あるプロダクトとは何か?」というプロダクトデザインの部分を突き詰めたかったからです。

ヌーラボの特性として、開発者が割合的に多いため、「使いやすいプロダクトを作る」という開発力には優位性を持っていると実感しています。その開発力に加えて「価値あるプロダクトとは何か?」をもっと突き詰めていければ、開発力との相乗効果で、より愛されるプロダクトとなれるのではと思ったことから、研修への参加を決めました。

Mobius Outcome Delivery(メビウスアウトカムデリバリー)の紹介

今回参加した研修は、株式会社アトラクタ主催による「Outcome Delivery Practitioner研修」です。

研修では、「アウトカム」という言葉が頻繁に使われており、重要なキーワードでした。アウトカムとは、日本語で「成果」を意味します

よく比較に出される言葉でアウトプットがありますが、こちらは「(出力)結果」「成果物」などと定義されます。

プロダクト開発の現場では「アウトプットは小さく・アウトカムを最大に」が効果的と言われています。アウトカムデリバリー(Outcome Delivery)はそれを目指すためのフレームワークです。

Mobius Outcome Delivery(メビウスアウトカムデリバリー)とは?

研修は「Mobius Outcome Delivery(メビウスアウトカムデリバリー)」というフレームワークに沿って行われました。公式サイトは、以下にあります。

研修参加者に配られたガイドから、メビウス(Mobius)について引用します。

Mobius(メビウス)とは?

Mobiusは、より良いアウトカムを顧客と組織にもたらすのを助けるナビゲーターです。Mobiusループに含まれる、プロセス、マップを含むツールキット、ツール、テクニックを利用できます。Mobiusは、シンプルなプロダクト開発から複雑な組織改革まで、どんな状況でも使えるように設計されています。

Mobius(メビウス)をどう使う?

Mobiusは、3つのステージで活動をガイドします。

  • ディスカバリー:顧客と組織のモチベーションを理解し、目標となるアウトカム(成果)を設定します。
  • オプション:アウトカム(成果)を届ける方法を複数導き出し、どのオプションから実施するかを選択します。
  • デリバリー:アイデアをテストするために何を作るかを決めます。実験を行い、何がうまくいき、何がうまくいかないのかを学びます。

 

また、参加者にはメビウスの3つのステージで使えるカードと、クイックガイドの冊子が配られました。カードには、デザイン思考やリーンスタートアップ、スクラムなどで利用されるツール・プラクティスが書かれていました。

ツール・プラクティスが束になったカードツール・プラクティスが束になったカード

クイックガイドクイックガイド

研修の流れ

今回の研修では、参加者は4名から5名ずつのグループに分かれ、ワークショップ形式でメビウスの3つのステージである 1. ディスカバリー 2. オプション 3. デリバリー を体験しました。

導入

課題・アウトカム・Mobiusについての洗い出し課題・アウトカム・Mobiusについての洗い出し

メビウスのステージを体験する前の導入として、各自に以下の3つの問いが投げかけられました。

「自分たちがプロダクト開発で抱えている課題は何か?」

「この研修のアウトカムは何か?」

「Mobiusとは何だと思うか?」

各自で思うことをふせんに書き出した後、壁に張り出して共有しました。

ディスカバリー

組織マップ / 目標アウトカム顧客マップ / 目標アウトカム

次に、グループ内で2名顧客役を選出し、「健康に関して」というお題をメビウスの3つのステージを使いながら考えました。

僕たちのグループでは「子供と一緒に遊べる体力を維持したい」というお題を元に進めました。

コンテキストとして、グループ内の顧客役がちょうど前日に子供の運動会があり、「これからも子供と一緒に遊んでいきたい」というモチベーションが生まれたからです

では、それに向かって障害となるものは何か?計測できるアウトカムは何か?という風に「顧客マップ」「目標アウトカム」に沿って考えていきました。

なお、ディスカバリーでは、WhyやWhoを意識する反面、Howについては触れません。どうしてもHowから考えることが多いのですが、まずWhyなどを真剣に考える訓練となりました。

オプション

次は、オプションです。

ここでは「CRAZY 8’S」を用いました。CRAZY 8’Sとは「子供と一緒に遊べる体力を維持したい」を実現できるアイデアを、5分で8つ書き出すというものです。(以前別の機会で、デザインスプリントの文脈で試したことがあったのですが、絵心がないマンにとってはなかなか大変です)

アイデアが書き出せたら、CRAZY 8’Sでグループのみんなが書いたアイデアを持ち寄って、「優先順位付け」をしました。インパクト / 容易性の2軸でアイデアをマッピングしていき、どれから優先的にやるかを見える化して判断しやすくします。

最後に、優先順位付けられたアイデアから上位いくつかを選んで「R.E.I.」にかけていきます。

R.E.I.とは

  • Research : 調査 – 何を見つけなければいけないか?
  • Experiment : 実験 – アイデアをテストして答えを見つける
  • Implement : 実装 – オプションをマーケットで試してみる

を表しています。

確度が低いものは調査や実験を行ってまずはアイデアを確かめ、確度が高いものは実装に移ると理解しています。

僕が感じたことは、実験 / 実装の違いです。実装となると、本番適用となって後戻りがしづらいというイメージがあるのですが、実験段階だとまだまだ途中段階なので積極的に修正していける、という前向きなイメージを持ちました。

僕たちのグループでは、「運動する時間と確保できない」という障害があったため、その障害に対する解決策として

「日常生活の中で自然と運動できるように、数Kgあるリストバンドの重りをつけるのはどう?」

というアイデアが上がりました。

(ドラゴンボール世代の人は、悟空が修行していたときのリストバンドを想像できるかもしれませんね 🏋️‍♂️)

なお、このステージの説明で「“要件”ではなくて”オプション(選択肢)”だ」という講師の言葉が、心に響きました。

要件というとやらなきゃいけないものに感じてしまうけど、選択肢と言われると適切なものを選ぶという心持ちになりますよね。

CRAZY 8'S / オプションの優先順位付け / R.E.I.CRAZY 8’S / オプションの優先順位付け / R.E.I.

デリバリー

デリバリーでは「プロトタイプ」を作りました。

「重りをつける」というアイデアに対して、最も優先して検証すべきだと思ったのは

「実際に重りをつけた状態で、日常生活が支障なくできるのだろうか?」

「適切な負荷がかかった運動となりえるのだろうか」

という2点でした。

ですので、「水が入った500mlのペットボトルを洋服の腕に仕込んでみて、重りを実現する」という手法で検証しました。

日常生活で行うであろう「パソコンを触る」「ホワイトボードにペンを持って書く」「電車のつり革につかまる」「箸を持つ」といった行動を実際に取ってもらい、そのときに感じたことをインタビューで聞き出していきました。

面白かったフィードバックは、「ホワイトボードにペンを持って書く」のように上下に動かすとき動作をすると負荷がかかっている、「つり革につかまる」だけではそこまで負荷はかからない、などです。

このようなフィードバックも、想像だけでなく実際に確かめてみないと分からないことも多いですよね。

他のグループでは、アプリの画面を紙で作って、画面遷移やアプリ利用時のふるまいをシミュレートするプロトタイプを作ったところもありました。このあたりは、検証したい内容に応じて、適切な手法を取れば良いのではないかと思っています。

プロトタイププロトタイプ

研修の最後に

最後に、「Mobiusとは何か」を研修で体験したことを踏まえて一枚の模造紙に書き出しました。この過程を通じて、研修内容の良いふりかえりになると同時に、理解が深まった気がします。

研修で感じたこと・学んだこと

研修を通じて感じたこと・学んだことを、いくつか取り上げてみます。

1. 計測可能なアウトカムから始める

研修の初期段階から 1. 計測可能なアウトカムを定義する 2.そのアウトカムベースに次の手を考えていく ということが求められました。

もちろん、ただの思いつきで施策を始めるということは少なく、何かしら目的があって施策を打つことが思いますが、計測可能であることが肝なのだと理解しています。

計測可能でないと、何かアクションを起こしたときに良くなったのか悪くなったのかを判断できない。そもそも、出発点の認識が関係者で合っていないかもしれない。

「言うは易く行うは難し」なのですが、研修とはいえ実際に流れを体験したことは、今後にも活かしやすくなるかなと思っています。

2. 自律性にもアウトカムが必要

講師からの「アウトカムがない自律性は、単に好き勝手するだけ」という言葉に、心の中でうなずいていました。

理想のチームのあり方に、自律性というキーワードがよくあげられます。

自分の経験では、組織やチームとして共通の目標がなかったり、ずれていたりする状態で自律性を主張しても、結局は成果が出なかったり、方向性が違ったりということはよく起きていました。

メビウスアウトカムデリバリーの研修を通じて、この問題を改めてふりかえってみると、アウトカムがちゃんと定義されていなかったことが一つの要因だったという発見ができました。今まで以上に意識していきたいです。

3. 知識でしかなかった概念を体系的に紐づけることができ、体験できた

リーンスタートアップやMVPなど、知識として今まで知ってはいました。その他にも、目標アウトカムの設定例や一次アウトカム / 中間アウトカムという分け方がトヨタのカタに似てるな、ということも研修を受けながら感じていました。

その上で、今回の研修で得たものは、以下の2点です。

  • 今まで学んできたバラバラのピースを、アウトカムデリバリー(Outcome Delivery)のフレームワークに体系的に紐づけて整理できる
  • 研修の中で実際に体験できたことによって、頭の整理にもなり、今後に活かしやすくなる

自社での今後の展開

メビウスアウトカムデリバリーの研修で学んだことは、Backlogなどのヌーラボのサービス開発に活かそうと考えています。

具体的な取り組みとしては、プロダクトマネージャーが考えている抽象的なビジョン・構想に適用するところから始めていきたいです。その過程で、左側ループの「ディスカバリー」を通じてブレークダウンしていき、関係者の認識を揃えていこうと思っています。

並行して、すでに進行中のプロジェクトに対しては、右側ループの「デリバリー」にも適用していき、全体のフィードバックループを回せるようになれればと目論んでいます。

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