紅葉の東川で「自分ごとな組織」と「サステナブルな物づくり」を学び、「神々の遊ぶ庭」大雪山で祈りをささげる #ヌーラボのリゾートワーク

雪がうつくしい旭岳に祈りを。しがみついてるのは娘

この記事は、ヌーラボのリゾートワーク制度を利用し、北海道の人口8,000人の東川町で、観光したり仕事したりインタビューしたレポートです。5日間滞在しての考察などを読者あまり想定せずにつらつら書いていきます。

「写真の町、東川」「クラフトの町、東川」「東川スタイル」

滞在したのは様々なブランディング施策を行い、ヌーラボともパートナーシップ提携している東川町。旭川の右下あたりに位置していて雪降る前の10/19-23に伺いました。北海道は広葉樹が多く山や森がとても明るく、地元京都の紅葉とはまた違った楽しみ方ができました。

明るいキトウシの森で落ち葉拾い

授業ではなくフィールドワーク

以前に宮古島でリゾートワークを行った時に現地でやることとして組まれていたプログラムは、高校生に授業するというものでしたが、今回は「フォルケホイスコーレ」というデンマーク発祥の学校を東川町で設立しようとしているCompathのお二人とのフィールドワークです。

リモートワークな会社員として、また子連れとして東川町に感じる魅力を表現して伝えることで、フォルケのプログラム作りに活かしてもらう、という役目です。「東川スタイル(2016)」「スタイルマガジン(2018)」を入手し、自分が気になる場所、価値観などのを事前にCompathの遠又さん安井さんと打ち合わせし、滞在時に東川の気になる人をインタビューさせていただきました。

以下、インタビューや考察につき文体が変わってます(書きやすいので)。

「じぶんごと」の組織作り

こだわりを持った人たちが住み、それを町が柔軟にスピーディーに支える。固くて動きが遅いのが代名詞のような役場で、いったどうしてそんな文化が生まれどうやって根づいているのか?
東川町の今のことを調べるたびに役場と「じぶんごと」というキーワードが出てくる。

個人的に、自分の生活のしやすさや仕事のしやすさ(生きやすさ)はどれだけ押し付けじゃなく自分で環境を整えていくか解決していくことができるか、という部分があり、単語としては「自治」というテーマとして捉えている。自分がDIYを好きなのもヌーラボが好きなのもそういった押し付けられた枠ではないところで生きやすさを感じられるからである。

なので上述の「じぶんごと」が役所というトップダウン、ルールにうるさいイメージのある場所でどうやって成立してきたのか、そしてそれが年月がたった今もどのように文化として受け継がれているのかを知りたく、「じぶんごと」の始まりからずっと携わっておられる菊地課長にインタビューをさせていただいた。

菊地課長… ではなくスタイル課近くの図書スペースの手触りのいい机と絵本を楽しむ娘

「ルールはつくらない」東川町スタイル課 菊地さん

この時点ではフォルケのプログラムにどう活かされるのかはノーアイデアで、とりあえず興味関心のあることとしていろいろつっこんで質問させていただいた。

合併により町が消える危機感と、もっとこうやったらよくなれるという思い、勉強会や研修と単独自立の路線の勝ち取り、自分たちで決めたからこその自分たちで何でもやらねば、結果を出さねばという意識の変革。細かいことは書けないがそこに到るまでの面白いエピソードもたくさんお聞かせいただき、自治的な文化の起こり、獲得の歴史として肌感で伝わるものがたくさん得られた。

初期のモチベーション高い人だけではなく組織として積極性を継承していくために「ルールをつくらない」「2年で人事異動」など運用方法にも工夫を凝らしているし、役場に入る人にも相応の覚悟を求めている。そういった方針に賛同できないと仕事をしていくのは厳しそうだが、どういう人材を求めているかがはっきりしている分、モチベーション高く「じぶんごと」を実践できる人が若手として入ってきて、新陳代謝しつつも積極的な姿勢も継承されているようだ。

さらっと書いたが「ルールをつくらない」「2年で人事異動」はいろいろな動きのきっかけとなっているようで、1年目から動かないとやりたいことやれない、やれないことはないからとっとと始めろという、ヌーラボでいうTry Firstを押し進める機能を果たしているし、特定の業務を特定の人だけがやることがなくなるので、この人じゃないと動かせないわからない、みたいな「スーパー公務員」を産まないし、知識移転の結果、相談できる相手も増えてアクションの幅もひろがる。

うちの開発チームでもいかにチームで捌くか、トラックナンバーを増やすかという工夫をしているがこういう思い切った仕組みの導入で引き起こされる実際の例はとても興味深い。

手びねりポーズのわたくしとなんでも答えてくれる菊地さん。お忙しい中ありがとうございました。

後日、ヌーラボの人事のAngelaに「チーム間の人の異動もっとさせたいと思ってるのに役所の人たちに出来て自分らベンチャーで出来てないのショックですわ。2年で強制チーム異動ていうの同じようにやれたりしないのん?」と聞いてみたとろ「持ってる仕事片付くいいタイミングになるんで、会社によっては離職率が上がったケースもあるんですよね。あと、自分で決めずに異動が決まることで、自己コントロール感がなくなって無力さを感じちゃうケースもあって。良し悪しありますね。」とのことで、なるほどそういうのも実際あるのかと。

しかし東川の場合と同じで、異動をポジティブに自分の成長の機会、知識の転用を通してよりダイナミックに活動していく機会と捉えられる人材は残るのでそれはそれでありなのではないかとも思う。実際に自分が異動した時にどれくらいポジティブに捉えられるかは状況次第だが、またすぐに異動することが可能だったり、横断的な知識が活かせる状況に持っていけるならそこまでしんどく感じないような気もする。
あとは個人単位ではなく、チームとして別のプロダクトだったり役割を替えていくのであればチームとして培った連携力は維持されつつ新しい活動領域へと手を伸ばすことができるのでそういう形での流動性でもいいのかもしれない。

インタビュー後にフォルケのプログラムにどう活かせるか深めるミーティングを行い、組織の目指すカルチャー(ヌーラボならNuice Waysに代表される)の体現なり継承を東川の例をインプットにもっとそれぞれのことばで語れるようになるのはどうだろうというようなことを話した。

東川スタイル
http://sangakusha.jp/h-style/toc.html

「サステナブルなこだわり」の物づくり

DIYといえば木、床を貼るにも棚を作るにも木にお世話になっている。大抵はホームセンターで杉やヒノキやパイン材だけとたまに奮発して広葉樹のナラをつかってみたりすると肌触りのよさだったり重さだったりとその質感にうっとりする。

そんな日曜大工好きとして訪ねてみたかったのが旭川の家具工房であり、しかもこだわりを持って長く使える家具づくりや家具の修理を行っている、「白樺プロジェクト」を立ち上げた木と暮らしの工房の鳥羽山さんにお話を伺うことができた。

菊地課長へのインタビュー観点とは別で、この消費社会のなかで自分のこだわりをどう世の中に適応させるのか、どう折り合いをつけているのかという観点でもお話を伺った。

可愛いスツールや修理の依頼を受けた家具など見ていてワクワクする

「白樺プロジェクト」 木と暮らしの工房 鳥羽山さん

ちょうど先日発表されてきたばかりの資料を説明いただきながら、森林資源という有限のリソースをどうやって保全しながら(それも無理なく)家具や食器などの木工プロダクトとして提供していくか。バットで「青ダモ」が人気になって、成長に時間のかかるそこまで数もない青ダモが切られてバットの生産ができなくなった話など、漁業のサンマやうなぎと同じで管理し保全し余った利息分だけを使うようにしないと維持できない。そういった将来に続くエコシステムを、北海道に多く自生している「白樺」を用いて計画しているのが「白樺プロジェクト」だ。

森林を維持するために、一本一本植林していくのはコストかかるが、白樺なら地面を整えておけば次世代更新が可能だったり、平地でも管理できるので切り出すために山深く道を整備する必要がない。なので人口の減る林業の中でも管理可能だし、いままでチップくらいにしか利用されていなかったので材として活用の可能性もまだまだある。驚いたことにに京都のマールブランシュや元立誠小学校のホテル(どっちもよく知ってる!)から白樺の家具・什器の発注を受け使ってもらっている。

話の途中寝落ちした娘と一緒に。工房もご案内ありがとうございました

プロジェクトには大学の先生やクラフト作家など、家具をつくる以外の部分にも多くの人が参加していてネットワークの強さを感じる。鳥羽山さんは以前コンサルもやられてたからか、工房の職人というイメージとは異なり、話しやすくアイデアも豊富でとても面白い時間だった。いい家具を使い続けることの良さ、ニトリで買ってすぐ買い換える現実、家具のサブスクの可能性などを話した。

妻も一緒に話を聞いていて、あとで「こんなん好きよね、ここで働けたら働きたい?」って言われて「うん!」と答えた。東川に移住するなら半IT・半木工の生活したい。

白樺プロジェクト
https://shirakaba-project.jp/

物づくりの様子が見てて楽しい facebook
https://www.facebook.com/shirakabaru/

「人生の学校」フォルケホイスコーレ

今回のプログラムを準備していただいたCompathのお二人が東川に設立をめざしている「フォルケホイスコーレ」は、「それでいいんだっけ?」と人生を立ち止まる、それも1人でじゃなくて世代を超えたいろんな人と対話を通じてやりたいこと、すすみたい道を見つけるための場所。

一斉に同じタイミングで就活し、社会人になったら立ち止まることが出来ないように感じられる社会。自分ごととして関わらず、関わり方もわからないままスルーしてしまう身の回りの問題。そういった自分が見失った道、これでいいの?を時間をかけて仲間と掘り下げられるところができたらとてもいいと思う。

僕は一度社会で働く経験をしてから、興味のある分野、課題を感じる分野について、大学なりで専門的に掘り下げていく方が学ぶ目的がはっきりしやすいし、社会のかかえる課題解決の力になると思っている。なので社会人のための学校、それも全員が寮で同じ時間を過ごし、学びの中で対話や民主主義的なメソッドも身につけまた社会に戻っていくというこのスタイルは、多くの人が自分ごとから遠ざかってる今の日本の中にあってほしいものだと感じた。

お二人に案内してもらったセントピュア。空間がいいと仕事もすすむ

「立ち止まることがあたりまえに」Compath 遠又/安井 さん

デンマークでは法整備や資金援助などの運営に必要な制度が整っている。しかしそういうものが整っていない日本でフォルケをどうやっていくのか、1週間ほどのショートプログラムを実施しながらどう立ち上げていくか、いろいろなパターンを試している。

今回ヌーラボのリゾートワークと連携したフィールドワークなプログラムを作成されたのも、リモートで仕事が可能な会社員が実際に東川にきて、フォルケスタイルのプログラムを受けるとどのように感じるのか、東川でやるうえで町の魅力のどこが活かせそうか、実際に研修という形でプログラムを提供できそうか、などを測る目的もある。
ちなみにヌーラボからは他に2人、所属や属性が異なる人が参加するので今回とはまた違った視点のフィードバックが得られるのではないかと期待されている。後のおふたり、頑張って。

お二人とも東川に拠点を持ち、東京と行ったり来たりの生活をしている。別に東京でもいいのにそこまでしてなぜ東川でフォルケを立ち上げようとするのか。フォルケは立ち止まる場所でありそのために時間的、精神的な余白が必要であり、豊かな自然の中で過ごすことが日常から離れて余白を作るのには適してるというのがある。ただ、東川に自然環境だけではなく、いまの社会では本流じゃないかもしれないけど大事なものってあるよね、というこだわりを持って物づくりしたりまちづくりしている人たちがたくさんおり、何かやりたいときに後押ししてくれ手助けしてくれる。

お二人を撮影しそこねたのでミーティング中に頼んだおしゃプリンをかわりに

菊地さんや鳥羽山さんのお話を聞いた時も感じたが、この自分たちで助け合い生み出していける環境ってとても心強いものだと思う。官民かかわらず繋がってるしやりたいことに対しての動きも早い。フォルケという理想を実現するためにお二人が東川を選ぶ理由もこの短い滞在でわかる気がした。個人的なテーマの「自治」でいうとその度合いが高い町なんだろうなと思う。

フォルケホイスコーレ
https://www.ifas-japan.com/folke/

CompathのHPが出来てた!
https://schoolforlifecompath.studio.site/

東川滞在で感じた移住地としての魅力

中心部に魅力的な図書館を備え、センスのいいお店が点在し、郊外部には整備された田畑や美しい森や圧倒的な山がひかえている。求めてる物が大体ある。ちょっといけば旭川に出れるしいざという時も困らない。

 

キトウシの森の展望閣からの眺め

移住するための空き家の確保や分譲地の整備もしっかり行われており、また体験移住のための設備も充実している。今回滞在させていただいたのもそのひとつで、超快適だったしこの部屋に住みたい。
移住者のコミュニティーがあることや何かやりたいことがあったときに応援してくれる手をさしのべてくれるネットワークの存在などソフト面も充実している。そういう意味では以前に訪れた宮古島と比べると実際に移住したい、移住できるんじゃないか感は高いし、移住者に子育て層が多いというのも納得の環境だった。

手触りのいい家具や調理設備もそろってのんびりすごせる移住体験館

セコマデビューをはたす

とても良いところで面白い町なので皆さん機会があればゆっくり滞在するといいと思いまする。

以上、自分の興味あることを聞いてまわり刺激をうけ、山登ったりして(Backlogの安泰を祈り)家族ものびのびとした時間をすごしたリゾートワークの東川町滞在レポートでした。

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