この記事はヌーラバー真夏のブログリレー2024の16日目の記事です。
こんにちは。SRE課Platform Engineeringチームで、ヌーラボのコンテナプラットフォームの改善と標準化を推進しているiwa(@mananyuki)です。柴犬が好きです。
去る8/3、8/4にSRE NEXT 2024が開催されました。日本におけるSREの祭典ということでヌーラボのSREも参加し、非常に学びが得られました。
このブログは、SRE NEXT 2024に現地参加した以下のヌーラバーの参加レポートです。各人が特に感銘を受けたセッションを3つほど厳選して紹介し、それ以外の企画についても触れます。
- Iwa(@mananyuki)
- Hirota(@rongesan)
SRE NEXT 2024がどういうイベントだったのか、現地の空気感を含めて伝われば幸いです。
目次
SRE NEXTとは
SRE NEXTは、日本におけるSRE(Site Reliability Engineering)を主題とするイベントの中で、最も大規模なイベントです。
イベントの詳細は、公式サイトに記載される説明がわかりやすいため、ここに引用します。
SRE NEXTとは、信頼性に関するプラクティスに深い関心を持つエンジニアのためのコミュニティベースのカンファレンスです。
SRE NEXT 2024は4回目の開催となります。昨年のSRE NEXT 2023同様にオフラインとオンラインのハイブリッドで開催されました。私は昨年もオフラインで参加しましたが、今年はそれを凌ぐ盛況具合で、SREの裾野がより広がっていることを感じました。
Day 1
Reliable Systems through Platform Engineering
Iwa
1日目の基調講演としてSteve McGhee氏のセッションが開催されました。Steve McGhee氏は、SREの初学者に好適な『SREエンタープライズロードマップ』の著者ということもあり期待していたのですが、期待を裏切らない素晴らしいセッションでした。
セッションでは「99.9%のインフラの上に99.99%のサービス構築できる?」という問いかけから始まり、SREの導入からPlatform Engineeringまでの道筋を簡単に理解できました。問いかけの答えは「できる」なのですが、なぜできるのかについて様々な例をもとに解説していくという形をとっており、理解が補強されていく感覚がありました。これは、『SREエンタープライズロードマップ』を初めて読んだ時の感覚に近く、SRE初学者にこそ見てほしいと感じました。特にインフラストラクチャのSLO(Service Level Objective)とアプリのSLOは異なるものなので、きちんと分類して話す必要があるという観点は、とても腹落ちしました。
SREを実践している身からすれば、信頼性を高くすればするほどコストがかかるというのは、人的コスト・財務的コストを含めて経験的に理解しています。しかしながら、どのようにコストがスケールしていくのか初学者にはわかりづらい面があることも事実です。このセッションではデプロイアーキタイプに基づいた説明がありました。最近はEnabling SREの文脈で、SREの文化や原理原則をどのように伝えていくか悩んでいたため、そういった面でも学びがありました。
また、SREを導入して良くなっているかは計測し続ける必要があり、そのためにDORAメトリクスがあり、改善を続けるためのPlatform Engineeringがあると話されていました。Platform Engineeringの実践では「アプリケーションを載せるものがプラットフォームであり、それを作ることがPlatform Engineering」という誤解がよく生まれます。ですが、そうではないときちんと説明されていた点も非常に良かったです。例として、Paperwork as a Platform
やPeople as a Platform
という標語が紹介されており、とても頷きながら聞いていました。
Becoming SRE – SREって何から始めればいいの?
Iwa
著名なSREの方々によるパネルディスカッション(1)です。特にSREチームの創成期から成長期に着目し、以下の3つのテーマについて話されました。
- SRE立ち上げフェーズにまずやること
- SREの採用・育成
- SREとしての意思決定・実行スピードを落とさないためにやっていること
ヌーラボのSREチームは立ち上げから5年が経過し、それなりに成熟したSRE組織となっています。その中で多くの悩みがあることはヌーラボにおけるSREの現在地というブログに書きました。ちょうど悩んでいたということもあって、このパネルディスカッションは非常に沁みました。
特にソフトウェアエンジニアと信頼を構築すること、サービスの価値を理解することが重要と皆さん語られており、とても頷いていました。私自身サービスの価値の理解こそSREの実践を自分ごととするために必要と考えていたので、納得感がありました。
また、「意思決定・実行スピードを落とさないためにやっていること」で、maruさんが話されていた「あえて実行スピードを落とした」という話が興味深かったです。ソフトウェアエンジニアとSREによるチームで、SREが充分な人数になると、SRE内でレビュープロセスが完結し高速な意思決定になったように見えます。しかし、SREに閉じた意思決定が為されることで、ソフトウェアエンジニアが取り残されてしまう問題が発生してしまった、という話をされていました。これでは分業化が進んでしまい、チームのアウトプットのスピードとしては鈍化してしまいます。この視点は自分の中にはなかったもので目から鱗でした。
Hirota
SREの立ち上げから、採用や育成、意思決定や実行スピードといったテーマで登壇者同士でディスカッションする形式のセッションでした。
SREの立ち上げフェーズで何をやるかをテーマにディスカッションをされていた際に「名前がついていないプラクティスに名前をつけて保護する」という話題がありました。
Enablingの段階でSREって何ぞ。という状況においても、実はSRE的な運用は大抵の場合存在しているように思います。
そういった取り組みを保護することで、SREの業務であると認識してもらう最初の一歩としてとても受け入れられやすい取り組みだなーと感じました。
私がSRE本を最初に手に取ったときに、なんとなく業務の中で意識していること、取り組んでいることがうまく言語化・名前付けされていることで非常に共感を持てたことが今の自分のキャリアを形成しているきっかけになっているので、共感しかない話題でした。
Day 2
SRE の考えをマネジメントに活かす
Hirota
リクルートの近藤さんによるセッション。
マネジメントとSREingのプラクティスを対比して、双方の共通点からマネジメントへの理解を深めていくといったお話。
例えば双方のMissionはそれぞれ以下のように整理されている点
- マネジメント
- 自組織と隣接組織のアウトプットの期待値コントロール
- SRE
- SLOつまりサービスの信頼性の期待値コントロール
このようにSREの視点からマネジメントを学ぶことでマネジメント業務を敬遠しがちな自分にとって、抵抗感が減り、より親しみやすく理解しやすい内容でした。
あと個人的に気になったのは、マネジメントにおいて傾聴力や言語化スキルは後天的に習得できるということ。
この話はセッションの中ではあまり深堀りされていなかったのでAsk the Speakerで直接質問すればよかったな〜と思いました。
SREの技術トレンド2024
Iwa
著名なSREの方々によるパネルディスカッション(2)です。それぞれの方の直近の発表に対して、パネラーや聴講者が質問する形式でした。私は入室が遅れてしまい立ち見になりました。非常に人気のセッションだったようです。
Platform EngineeringとLLMの話題が8割ほどで、トレンドの中心はその2点になると感じました。特に、SREとPlatform EngineeringはどちらもDevOpsのひとつの実装でしかなく、仮説検証のループを早く安全に回すための取り組みと明言されていました。これは、自分自身の理解を確かめられ、良い体験になりました。また、Platform Engineeringは多くの開発組織でオーバーエンジニアリングになるという話もありました。私たちも開発組織のサイズに合った適切なやり方を模索し続ける必要があると引き締められる思いでした。
企画
懇親会
Day1終わりに懇親会が開催されました。
TK-NIGHTCLUBというクラブ会場で、テックカンファレンスの懇親会とは思えないぐらいパリピな雰囲気。
パーティースポンサーであるCloudbaseさんのオリジナルIPAが配布されていました。なんでも佐渡ヶ島で仕込んできたんだとか。
CloudbaseさんのIPAうまい! #srenext pic.twitter.com/Yw8uoK5920
— ゆずきぬ🍍🍑🐹🐈⬛🎀 (@mananyuki) August 3, 2024
これめちゃくちゃ美味しかった #srenext pic.twitter.com/8jnYcpZbPy
— ほっし (@rongesan) August 3, 2024
現在は他社でSREとして活躍するアルムナイとの再開や、SRE界隈のイベントなどで知り合った顔見知りの方々との交流は、これまでの経験や共通の関心を共有できる貴重な機会になりますね。こういったコミュニティイベントでの懇親会参加も醍醐味の一つだと感じます。
懇親会は絶対参加すべき!
スタンプラリー
しっかり全スポンサーブースをめぐりフルコンプ。
景品はけろぺんのアクスタキーホルダーと手ぬぐいでした。
うちわがスタンプラリーシートの代わりになっていて、スタンプを集めながら涼を取れるのは、ホスピタリティあふれる嬉しい工夫ですねー。
Ask the Speaker
少しセッションの感想の中でも言及しましたが、SRE NEXT 2024からAsk the Spakerという企画が行われていました。
セッション終了後に登壇者と1onN形式で感想や質問を投げかけることが出来るというもの。
有識者との議論の場として活用することが出来て非常に良い取り組みだなーと感じました。
ぜひ次のSRE NEXTに継承してほしい企画ですね!
終わりに
SRE NEXT 2024は非常に学びの多い場でした。運営の皆さま、スピーカーの皆さま、本当にありがとうございました。そして、お疲れ様でした!
今回はヌーラボから2名が現地参加しましたが、会社から多くのサポートをしていただきました。特に以下の点が助かりました。
- 休日の開催だが出勤扱いにして良い
- 出張費用は全額支給
私は福岡在住のため、出張での参加だったのですが、イベントへ参加しやすい環境に助けられました。
また、SRE NEXT 2025の開催も決定し、来年もRoad to SRE NEXTが開催されるそうです。今年はRoad to SRE NEXT@福岡に参加して、その時点からずっとワクワクしていられたため、来年も同様にワクワクしながらイベントを待てることが幸せです!
同じ悩みを共有する人たちが、それぞれの悩みについて語り合う瞬間は最高であり、もっとこのような場が増えて欲しいと切に願います。福岡では、現在SREコミュニティによるイベントが継続的に開催されておらず、少し寂しい思いをしています。福岡でSREを実践する会社として、福岡にSREコミュニティを立ち上げられると良いと感じています。
総じて、SRE NEXT 2024はとても楽しいイベントでした!
また来年に会いましょう👋