工具で学ぶユーザビリティー(中級編)と よもやま話

※ このブログはヌーラバー ブログリレー 2021 9日目の記事です。明日は keikoshingaiさんの記事です。

昨年もこの時期に同じように工具を題材にユーザビリティーを考える記事を書いておりましたがその続きとなります。一年が経っていることに衝撃を受けながら書いていきます。

のみを題材にしたユーザビリティーの話

NuCon 2021の「屋台」というスタイルで、「工具で学ぶユーザビリティーの中級編」ということで、ユーザーの利用経験がユーザビリティーにもたらす影響の話をしました。のみを題材にしています。鑿であって飲みではございません。

そのスライドがこちらになります。

「屋台」とはなんぞ?ですが、スライドを読み上げた動画を配信時に流し、他のNulaberと一緒に見てツッコミや雑談をするという発表スタイルのことです。聴き手の顔が見えず、レスポンスに乏しく不安になりがちなオンラインでの発表が一転、わいわいとした体験になってとても楽しい時間でした。

内容としては上のスライドを見ていただくとして、以下ではスライド外で出た話や、最近見かけたユーザビリティーの話などをなんとなく書いていきます。

ユーザビリティー向上のために人間を特訓する

初めは使いにくい道具であっても、何度も繰り返し使い続けることで、人間の神経回路が最適化され、あまり意識しないでも使えるようになります。慣れとか学習といいますが、人間にかかる負荷が下がり、結果としてその人にとってのユーザビリティーが上がります。

屋台で例として上がったのが、JRのみどりの窓口で係員さんが操作する端末の話でした。要素が多く複雑なUIのため、専用の訓練室まで作って学習し、高速に操作できるようにしているということでした。

CacooでUIを写経してみたのですがこんな感じの端末です。

mars

使いやすさを追求して画面デザインが刷新されたようですが、まだまだ多くの要素が詰め込まれた画面となっており、初めて使うひとにとって判断力や集中力が必要な気配がします。

写経してみてどこに何が配置されてるのかなんとなく把握できたのですが、実際の発券業務で求められるスピードで操作するためには体に染み込ませないとむずかしそうです。

こちらの端末は一般の人が触れるものではなく、高度な業務知識を持っている人が操作するのが前提となるので、道具側をやさしくするよりも、人間側の学習の効率をあげることが「操作速度を最大化する」という業務目的のための正解になっているのだと思います。

想定するターゲットや目的によって、道具側か人間側かどちらにユーザビリティーの改善をゆだねるかが変わる例といえます。ちなみに、僕はこういう特定の業務に特化した圧縮されたUIも嫌いではないです。半角カナを使ってスペースを確保してるのとか愛おしいですね。

サンクコストあるある

リソースを注ぎ込んでしまったがためになかなかやめられない例として、FPSゲームと機材への投資の話が出ていました。エイミング向上のために費やしたマウス群と日々の練習時間は無駄にしたくないですよね。。。

みなさん、何かそういうものありますか?

ユーザビリティーとはどこを指すのか

経験によってユーザビリティーは変化すると言い切っちゃっていいかという話から。

「ユーザビリティー」という言葉が緩いので定義も使い方もそれぞれになりますが、僕は、人と道具と対象のインタラクションの中にユーザビリティーが存在すると考えていまます。なので道具の変化によってユーザビリティーは変化するし、人の変化によってもユーザビリティーは変化する。人は経験を積むことができるので、それによってユーザビリティーも変化すると言えると思います。

ユーザビリティーについての絵をなんとなく描いてみました。

1.

imagine

最初、人が何か対象を見て、実現したいことを脳内に描くとこからスタートします。

 

2.

usability1

そこに道具が現れます。道具を使って脳内に描いたことを実現させていきます。

実現までにかかる人間の負荷(筋力、判断力、集中力)によってユーザビリティーが定まります。主に主観的なものとして表現されますが、実現速度、再現性などで外部的に評価することも可能です。

 

3.

usability2

道具が代わるとどうなるでしょうか。使い方が変わるので人間の負荷も変わり、先ほどと違ったユーザビリティーとなります。ちなみに、絵はゴムハンマーではなくインパクトドライバーのつもりです。

 

4.

usability3

次は人が代わりました。同じ道具でも身体的な差や経験の差から人間の負荷が違うので、また違ったユーザビリティーとなります。

 

5.

ultimate

究極のユーザビリティーが発生しました!思い描いた瞬間に実現するので、誰も道具の存在すら気づかないはずです。

 

UI研究者・増井俊之氏が語る“使いやすさ”の本質、で増井先生が自動ドアを例に挙げられていたのですが、意識することのなく目的が実現できる状態がこんな感じですね。

人が道具の使い方を極限まで習得すると、最終的に道具なしで目的が達成される、道具すら忘れ去る、みたいな話が名人伝の「不射之射」としてあります。単なるお話ではあるものの、道具ではなく人間側を鍛えることで実現する、究極のユーザビリティーと見なせるのではないでしょうか。強引ですか。

おまけ

そういえば、12月中、多摩美術大学さんがバーチャル大学として毎日公開講座を開いてくれており、とても有り難く拝見してるのですが、そのなかの菅 俊一先生のこの小ネタが好きでした。

mascat

品種改良というのは、実はユーザビリティーの改善活動なんだなという気付き。

究極的には、実際に食べて飲み込まなくても美味しさと満足感が脳を満たし、即座に血管に栄養が溢れる、みたいな状態なんだろうか。不食之食。「食べ物に学ぶユーザビリティー」とかも面白そうですね。

全体のお話はこちら。

これら全てYouTubeに残してくれており(太っ腹)、トップで活躍されてる方たちの話がどれもとても面白く、サービス開発や日々の気づきにも活かせるので、年末にでも見るのおすすめです。

よもやま、おわり。

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