私は母親であり、プログラマーです。家事育児のため残業は基本できません。 しかし母親業と並行しながら、あるプロジェクトにリーダーとして参加する機会を得ました。「 ママプログラマー 」の仕事の進め方と、プロジェクトのリリース日を厳守できた3つの理由、そして仕事をする母親としての意見を最後にまとめたいと思います。
ママプログラマーの仕事の進め方
1. 限られた時間を有効利用する
家の雑用は毎日細々とあり、夜 7 時に帰宅したかと思えば 気付くと 10 時を回っています。
残業をしないと最初に書きましたが、台所で Backlog や Typetalk を眺めてはいます。 家事をしているとパソコンを開くこと自体が億劫に感じます。スマホでさらっと確認できるのはとても便利です。 空いた時間で仕事の状況を把握しておくと、次の日の朝にチェックすることが少なくなり、すぐに集中して開発に取りかかれます。
2. スマホのアプリから欠勤連絡をする
学校行事や子どもの病気により欠勤しなければいけない事がよくあります。双子のため学校行事は一度に終わりますが、病気は時間差でやってきます。昨冬は合計 3 回子どもがインフルエンザにかかり一週間会社に行けなかった時もありました。
予定のわかる学校行事は事前に有給申請をしますが、 急な欠勤連絡は Typetalk で行います。そのやりとりを端的に書くと「こういう理由で今日有給取ります」「わかりました」の 1 回のみです。所用が落ち着いた後に有給申請をします。
個人の仕事のやり方を尊重してくれる会社だと思います。
ハートで示す いいね機能 で「わかりました」の返事をもらう時もあります
3. 就業時間の不足はリモートワークで補う
子どもの突然の何かのために有給は残しておきたいという意識が常にあります。休んでばかりいると仕事の進捗も滞り、気持ちが焦って自分にも子どもにも悪影響です。 出社できないけれど仕事を進めたい時は「自宅作業します」「わかりました」の やりとりに変わります。
ヌーラボはリモートワークの設備が整っています。リモートワークには良い点と悪い点がそれぞれあると思います。良い点は子どもの世話をしながら自分のペースで仕事を進められることです。悪い点は人の目が届かない場所での作業なので 、自分に厳しくないと成果が出づらいです。
なるべく出勤してメンバーと直接会話し、時にはリモートワークをうまく利用するように心がけています。
ここまで日々の仕事の進め方について書きましたが、次はプロジェクトをどう進めたかについて書きたいと思います。
プロジェクトのリリース日を厳守できた3つの理由
まず初めに、私がリーダーを務めたプロジェクトの目的を説明したいと思います。Backlog には大きく分けて二つのプランがあります。一つはASP版と呼ばれる、ヌーラボがサーバやデータを管理するクラウド型のプランです。もう一つがお客様がサーバを構築してデータを管理するオンプレミス型のエンタープライズ版と呼んでいるプランです。このプロジェクトは後者のエンタープライズ版をリリースするためのものでした。ASP 版の約 1 年分の改善を エンタープライズ版 に移植してリリースします。
1. チームで認識合わせをする
プロジェクトが始まってすぐに インセプションデッキ を作りましょうとスクラムマスターから提案がありました。インセプションデッキの中の一つとして トレードオフスライダー も作成しました。このプロジェクトの優先順位を可視化しましょう、というものらしいです。
社内のインセプションデッキは Cacoo でテンプレートが用意されています。Cacoo だとメンバーが同時にインセプションデッキを更新できて大変便利です。Cacoo のテンプレートはここに置いていますので、よろしければ使ってみてください。
「期日を死守する」が最優先課題です
実はこの時点で、例年に比べてプロジェクトの開始時期が半年以上も遅れていました。Backlog ASP 版からの移植機能に UI 改善という大工事が含まれていました。より安定したものを提供するため ASP の UI 改善が落ち着くまで、プロジェクトの開始時期を遅らせていました。
そういう理由から 「できる限り早くリリースする」という目標を掲げ、上図のトレードオフスライダーからもわかるように「期日を死守する」ことを最優先課題としました。下図はプロジェクト開始当初に引いたスケジュールです。最初に意識を合わせたことで 目標を達成できたことがわかります。
実際のリリース日は6月15日でした
2. 取捨選択をする
Backlog エンタープライズは 今回で 10 回目のメジャーリリースを迎え、なかなか年齢を重ねている製品です。 悪い意味で流行に乗っていない手間のかかるインストール方法は改善したいことの一つでしたが、インセプションデッキに従って今回は見送りました。
3. 社外の力を借りる
トレードオフスライダーから時間最優先とし予算は気にしないという意識があったため、テストは社外の専門の方にお願いすることにしました。初めての試みのため、週2回のミーティング、さらには専用の Typetalk トピックを設けて疑問などはすぐ話し合うなど、慎重に進めました。 不具合報告は Backlog に登録してもらいました。
その結果は、良い結果で終わったと思っています。 開発に長けている人がテストが上手かといえば、必ずしもそうではないことに気付きました。 テスターさんは私の想像以上のスピードでテストを消化していき、中身を知っている開発者だと意識せず逃げてテストしてしまうバグを見つけてくれました。 1ヶ月半のテスト期間で、約 3700 件のテスト項目を消化し、118 件のバグを報告してくれました。
まとめ
母親プログラマーであることを最初に強調しましたが、振り返ってみると、母親であることにあまり負い目を感じないで済む職場に私はいます。残業ができなかったり、子供の急な体調不良による自宅作業のために迷惑をかけることもありますが、チームが協力し無事リリースできたことをありがたく思っています。
出産育児のために一度仕事から抜けた後、復帰できるだろうかという不安が私にはありました。 仕事を辞めるときに言った「また仕事させてください」という軽い一言を実現してくれた会社に感謝しています。仕事で壁にぶつかった時、魔の二歳児期から学んだ忍耐を活かせたこともありました。私のように仕事を始めることに一歩踏み出せない方が もしいらっしゃいましたら、母親であることに自信を持って前に進んでいただきたいと思います。
ヌーラボはお母さん開発者も歓迎しています。