AI DevEx Conference 2026 参加レポート

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この記事はヌーラボブログリレー2026 Tech 夏の4日目として投稿しています。

株式会社ヌーラボでソフトウェアエンジニアをしているSenbaです。

私はBacklog開発チームに所属しており、機能開発と兼務する形で、DevEx チームのメンバーとして横断的な開発者体験の向上にも取り組んでいます。

そんな中で、AIによって開発者体験や生産性の指標が変わりつつあるのではないかと感じており、今後のチームの方針ややり方を考える上でも参考になると思い、2026年7月22日〜23日に開催されたカンファレンス「AI DevEx Conference 2026」に参加してきました。

2日間で多くのセッションがありましたが、ここでは特に印象に残った3つのセッションについて、内容と感じたことを紹介します。

AI時代の開発生産性を捉え直す — 経営と現場をつなぐ「開発組織のオブザーバビリティ」

価格.comなどで有名な、カカクコムさんの発表でした。

開発組織を「複雑系のシステム」として捉え、オブザーバビリティの思想を適用するという視点が面白かったです。

これまではFour Keysでソフトウェアデリバリー能力を測ってきましたが、AIで実装速度が上がった結果、開発組織に必要なのは「事業全体の探索能力」になっており、「未知の未知を捉えて学習するサイクル」が求められるというお話でした。具体的な取り組みとしては「プロジェクトツリー」が紹介されていました。組織の活動を「戦略投資・成長投資・運用保守・間接業務」に分類し、投下時間・工程・組織・個人まで接続することで、全体の配分から個別の活動まで段階的に辿れるようにし、開発組織の可観測性を高める仕組みです。

大事なのは未来から逆算して観測構造を設計することであり、最後は「企業全体を学習し続けるシステムとしてエンジニアリングする」というビジョンで締めくくられていました。

AI時代にはボトルネックが実装からレビューや意思決定に移動する、という話はよく聞きますが、その意思決定の材料を揃えるためにオブザーバビリティの考え方を適用するのは、すごく斬新でした。

ビジネス成果を出すためのDevEx戦略:サーベイの外側にある摩擦の正体

こちらはDay1のクロージングキーノートで、GitHubとメルカリの方が登壇し、Findyの方がモデレーターを務めるパネルディスカッション形式のセッションでした。

印象的だったのは、開発者が抱える問題は表面化しづらい、という話です。問題が起きていても、開発者は代替手段や付け焼き刃の対応で何とかしてしまい、それが本人にとっての当たり前になってしまうからです。ユーザーインタビューのように、開発者を観察することで初めてわかる問題もある、と言及されていました。

幸いなことに、私は開発者体験の向上に取り組む立場であると同時に、機能開発を行う開発者でもあるため、当事者意識を持って課題を捉えられる立場にいます。リソースの問題はあれど、内部開発者プラットフォームを改善する上で、開発との兼務によって解決すべき問題を捉えやすくなるのは、かなりの利点だと感じました。

2026年のソフトウェア開発を考える

和田卓人(t_wada)さんの発表でした。発表の中心にあったのは、AI時代の新しい負債である「認知負債(Cognitive Debt)」という考え方でした。

かつては「理解していないとコードを書けない」ため、開発の速度・内容・理解は同期していました。しかし今は理解よりも速くコードが生成されるため、それぞれが乖離してしまい、開発過程で形成されるはずだったメンタルモデルが形成されません。しかも、技術的負債はコードとして見えるのに対し、認知負債は目に見えないのが厄介です。処方箋としては、理解度チェッククイズなどで「理解を関門」にすることや、理解に向いた図や画像による説明で理解を漸進的に育てることが重要だ、というお話でした。

終盤の「理解とスピードはトレードオフではない」という話は、有名な「質とスピード」と重なる部分がありました。以下は、両者の構造が似ていると感じた点を、自分なりに対比として整理したものです。

  • 質とスピード
    • 「品質を犠牲にすればスピードが手に入る」という思い込み
    • 実際は、内部品質を犠牲にして得られるスピードはほんの短期間(1ヶ月ももたない)で、すぐ技術的負債が効いてきて逆に遅くなる
    • 質とスピードはトレードオフではなく、質がスピードを生む
  • 理解とスピード
    • 「理解を犠牲にして、AIに丸投げすればスピードが手に入る」という思い込み
    • 実際は、理解できなかった箇所を質問して理解しようとする、わずかな時間をケチっても、そもそも大きな時短にはつながらず、すぐ認知負債が効いてきて逆に遅くなる
    • 理解とスピードはトレードオフではなく、理解がスピードを生む

AI時代かどうかに関係なく、「認知負債に向き合う姿勢」は重要だと思うので、肝に銘じておきたいです。

まとめ

AI時代によって開発の仕方が大きく変わりつつありますが、その中で変わらないものとして、「見えないものを見える化し、学び続ける」ことの重要性を感じました。カカクコムさんの発表では組織の活動を、パネルディスカッションでは開発者が抱える摩擦を、t_wadaさんの発表では開発者自身の理解を——スケールこそ違えど、どのセッションも「見えづらいものをどう観測し、どう向き合うか」という共通のテーマがあったように思います。

AIによってスピードは手に入りやすくなった一方で、負債は見えないところ(組織のプロセスや、開発者の頭の中)に溜まりやすくなっています。だからこそ、観測して、理解して、学習し続ける姿勢が、これからの開発者体験の鍵になると感じました。

私が開発に携わっているBacklogは、運用を始めてから20年を超える巨大なプロダクトです。これだけ長く動き続けていれば、開発者がぶつかる摩擦も自然と積み重なっていきます。いつのまにか当たり前になり、「もうこれは仕方ない」と誰も口にしなくなった不便がないかを探して、一つずつ取り除いていくことを、DevExチームとして地道に続けていきたいと思います。

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