「私の業務自動化 実況中継」をやってみた

目次

こんにちは!ヌーラボのkenshirooです。 私は現在、AIXチームという社内のAI活用推進を担当するチームで活動しています。今回はその活動で実施した社内企画について書いていきます。

AIでの業務自動化に踏み出すときのつまずきどころや、それでも前に進めるコツが伝われば嬉しいです (この記事はヌーラボブログリレー2026 Biz 夏の1日目として投稿しています)。

ことの発端:社内アンケートで見えた「壁」

AIXチームの活動の一環として、先日、全社向けにAI活用状況のアンケートを実施しました。約150名から回答(回答率80%以上!)が集まり、結果としては9割以上のメンバーが日常的にAIを使っているという心強い状況が見えてきました。「AIを使いましょう」と呼びかけるフェーズは、当然ながらもう終わっているわけです。

ただ、その中で気になる声もちらほらありました。「自分なりに使ってはいるけど、使いこなせているのか分からない」というものです。

日常的にAIを使うところまでは来ていますが、「定型業務の自動化」や「仕組み化」まで踏み込めている人となると、全体の3〜4割程度にとどまっていました。最大のボリュームゾーンは「日常業務の一部として当たり前に使ってはいるが、仕組み化まではしていない」という層です。

「『自分の定常業務をAIに任せる』への一歩が、なかなか踏み出せない」。

この壁をどう越えてもらうか? が、AIXチームとしての次の課題でした。その解決策として、私が打った手が「実況中継」という企画です。

思いついた企画:「実況中継」

内容はシンプルで、その場で私の定常業務を探して、AIで自動化していく様子を、自分で解説しながら生実況するというもの。台本なし、リハーサルなし、成功する保証もなし。社内の誰でも見られるオンラインミーティングで、私の画面を映しっぱなしにしてやりました。

なぜこんな形式にしたかというと、AI活用の事例共有となると成功事例、つまり「こんな便利なスキルを作った」「作業時間が◯時間から▲時間に減少した!」という完成品の紹介が中心になりがちだと感じています。

もちろんそれも貴重な情報なのですが、これから挑戦する立場からすると、本当に知りたいのは「そこに至る過程」だったりするのかなと思っています。つまずくポイント、AIへの指示の出し方の温度感、うまくいかなかった時のリカバリー。そういう過程こそが一番の学びなんではないかと思ったわけです。

とはいえ正直、事前はかなり不安でした。AI活用を推進する立場の人間が、公開の場で自動化に挑戦して何もできなかったらどうしよう…と。実際、当日はじまる直前は緊張で口がパサパサになりました。開始直後、参加者がまだ誰もいない画面に向かって1人で趣旨説明を喋っていた時間は、なかなかに味わい深かったです(もちろんその後は多くの方に参加いただきました!)。

当日やったこと

当日の流れをざっくり紹介します。

まず「何を自動化するか」をAIに探させる

「AIに任せられる業務が思いつかない」という方も多いかなと考えたので、対象業務を探すところ始めることにしました。ここもAIといっしょにやっていきます。

私はClaudeにGmail・Backlog・Slackなどを接続しているので、「私の会話履歴や業務情報を元に、自動化できそうなタスクを提案して」とシンプルに投げてみます。同時に、私の業務状況が集約されているBacklogのAIアシスタントにも同じことを聞いてみました。

双方から提示されたのが「支払依頼業務」でした。2つのAIから口を揃えて言われると、さすがにやるしかありません(笑)。

AIに入れていい情報かを確認する

業務が決まったら、自動化の前に必ず行うステップがあります。それは「処理に活用するデータはAIに入力していいのか?」というセキュリティ確認です。

ヌーラボには、AIに入力してはいけないデータやそうではないデータを定めたガイドラインがあります。当日はこれを画面に映しながら、今回扱う請求書データがどの分類にあたるかを参加者と一緒に確認しました。

地味なパートですが、ここを飛ばすのは危険です。セキュリティポリシー違反や情報漏洩を防ぐためでもありますし、同時にデータ入力可否の判断基準を示すためにも、自動化の文脈では必ず触れるべき重要ポイントです。

業務フローの整理とリスク設計

まずは対象業務のフローを簡単に整理します。

  1. 月末〜月初にメールで請求書が届く(請求書はメールに添付されている場合や、リンク先に格納されている場合もあります)
  2. Backlogで課題を立てて、責任者に内容確認を依頼
  3. 確認が取れたら、会計システムで支払依頼を作成

月末・月初に請求書が集中して、支払依頼の締め切りは3営業日。地味に毎月ヒヤヒヤする業務です。

ここで大事にしたのがまずは業務フローの全体像を整理するところです。全体像がわからないと、AIへの指示の出し方もぶれてしまいがちです。なのでざっくりと最初に整理しました。

次に大事にしたのは、自動化する前に「AIに任せると怖いポイント」を洗い出すことでした。たとえばBacklogで誤った人にメンションしたら? 会計システムで間違った支払依頼を提出してしまったら? 経理メンバーを始めとしたみなさんに迷惑がかかります。なので会計システム上での操作は「下書き作成まで。提出は絶対にしない。最後に人間が確認する」というルールを最初に決めました。この設計をサボると大事故につながる予感がしたので、ここは明示しました。

4. いざ実行。そして案の定のぐだぐだ

スキル(AIへの手順書のようなもの)を作らせて、テスト実行してみます。

メールの確認、Backlogへの課題作成あたりは順調でした。過去の課題から「この委託先の確認はこの担当者」という対応関係まで正しく読み取っていて、「お、いけるのでは?」と思ったのも束の間、ここから雲行きが怪しくなります。

まず、3社のうち1社はメール添付ではなくリンク先から請求書をダウンロードする方式だったのですが、Claudeがしれっと「リンクは手動で開いてください」と提案してきました。

まぁもちろんそれでもいいのですが、せっかくなので出来るだけ自動化したいところです。その旨を伝えると、ブラウザ操作機能を駆使してダウンロードに挑戦し始めます。ここが長かった…。

さらにBacklog課題への請求書添付でも苦戦しました。結局直接は添付できず、「テストなので共有フォルダへのリンクで妥協しました」と、AIなりの言い訳をしてくる始末です。もちろんよく考えたら、必ずしもBacklog課題に添付しなくても責任者がリンクを見れればいいんですが、今回は既存の業務フローを変えない形でどこまでできるか試したかったです。

極めつけは会計システムへのPDF添付で、あの手この手を試すもののなかなか成功せず、粘りに粘った末に時間切れとなってしまいました…。

視聴してくれていた皆さんには、AIの処理をひたすら待つ沈黙の時間も含めて、実にリアルなぐだぐだをお届けすることになりました。私はその間、チョコレートを食べてしのいでいました。

それでも「最低限動くもの」はできた

とはいえ、です。

約90分で、メールの確認 → 請求書の取得 → Backlog課題の作成 → 会計システムでの支払依頼の下書き作成、という一連の流れの骨格は動くようになりました。

最後にClaude自身に「完全な自動化と比べて何ができていないか」を網羅的に整理してもらいました。

手動処理が必要なのは、

  1. Backlog・会計システムへの請求書の添付
  2. 承認者が確認した旨の連絡を受けて支払依頼の下書きを作るようにAIに依頼する
  3. 下書きを確認して支払依頼を提出する

という部分であることを白状してくれました。そして「チャットだけでなくコードエディタやリポジトリ管理を使うと安定しますよ」という改善戦略まで提案してくれました。不足を認めつつ次の手を出してくる。えらい。

実際、チャットベースの自動化はローカルのファイル操作あたりに限界があるので、本格的に育てるならコード側に寄せていくのが正解だと私も思います。ここは次回以降の宿題ですね。

やってみて伝えたかったこと

事後の感想としては、「思った通りのぐだぐだぶりで良かった」に尽きます。うまくいったり、いかなかったり。その両方を生で見せられたのは、完成品の発表では絶対に伝わらない部分だったと思います。

そのうえで、これから自動化に挑戦したい方に伝えたいことが2つあります。

1つ目は、最初から完成を目指さないこと。 スキルは一発で完成しません。「ここができてなかったよ」「こうしてほしい」とAIに伝え続けて、少しずつ育てていくものです。1回動かしてはダメ出しして、また動かす。この繰り返しでどんどん自動化に近づいていきます。

2つ目は、待ち時間を味方につけること。 当日は説明しきれなかったのですが、AIが処理している間、実は結構な待ち時間があります。なのでスキル育成は「これ専用の時間」を確保するより、普段の業務をやりながら合間合間で回すのがおすすめです。指示を出して、他の仕事に戻って、終わった頃に見て、またダメ出しする。それだけで精度は少しずつ上がっていきます。

まとめ

今回の学びを整理します。

  1. 自動化する業務探しからAIに任せてよい
  2. 着手前に「AIに入れていい情報か」を必ず確認する
  3. 業務フローと怖いポイントを洗い出して大事故を防ぐ
  4. 最初から完成を目指さず、ダメ出ししながら少しずつ育てる
  5. 待ち時間は他の業務へ。合間で回せば精度は上がる

結論をひとことで言えば、「ぐだぐだでも、まず動かし始めることが業務自動化への一番の近道」です。完璧な準備を待つより、小さく始めて育てるほうが確実に前へ進めます。

「使ってはいるけど、使いこなせているか分からない」と感じている方こそ、まずは小さな定常業務をひとつ、AIに投げてみてください! 

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