台湾で2015年5月15日から2日間にわたって開催された「Modern Web」という大型カンファレンスにて「デザインで解決した課題について話して欲しい」と依頼をいただき、デザインに関するお話をさせていただきました。
喜んで快諾したものの、発表内容について社内で話し合ったところ『デザインを組み込むことが当たり前になっているから、デザインで問題を解決するというよりは、デザインがない世界がもうあんまり分からない』という感じで、僕を含め、いわゆる「ネタ」に困ってしまいました。
ヌーラボのデザインはじめ
おそらく、依頼をしていただいたイベント主催者のリクエストの意図は「プロジェクト削除の誤操作を防げるよう UI を改善した」というような細かな話をして欲しいということだったのだろうと思いますが、参加者の多くがプログラマーの方々のようでしたので、もっと大きな話をしてデザインの影響の大きさを知っていただこうと思い、ヌーラボが初めて自社サービスにデザインを本格的に取り入れた頃のお話をさせていただきました。
Backlogは、「プロジェクト管理」という硬いツールで、ともすれば、遊び心もなく、非常に簡素な画面になるところが、『毎日の仕事を、もっと楽しく、楽に、チームを、もっと明るく、元気にして、よりスムーズにプロジェクト成功へ導く』というツールになったのは、大胆に明るくポップな感じのデザインを取り入れた功績が大きいと感じています。
以下のインフォグラフィックスが、その初期バージョンから2o11年までのBacklogの歩みなのですが、ヌーラボの歴史において、デザインが取り込まれたのはBacklogの商用版リリースのときになります。
デザインを取り入れて何を解決したのか
ベータ版リリースを行った2006年は、もちろん「クラウド」という言葉もなく、プロジェクト管理のような重要な情報を外部サービスに預けるということに大きな障壁がある企業様が多く、ポジティブなフィードバックもありましたが、『小さい会社が運営しているので信用出来ない』『入力しづらい』など、多くのネガティブなフィードバックもたくさんいただきました。
しかし現在は、セキュリティーポリシーなどが厳しいであろう上場企業様なども含め、沢山の企業様に使っていただいており、まだまだ改善努力は必要と思いますが、「使いやすい」というご意見もいただいています。
さらに「プログラマーなどの専門職の方以外を巻き込みやすい」との意見も頂いており、業種を超えて使うことのできるコラボレーションツールとしても、大変良いフィードバックをいただけています。
ということで、イベントではデザインで解決したのは以下の3点ということでお話させていただきました。
- 安心感
- 入力時などの使いやすさ
- コラボレーションツールとしての使いやすさ
デザインで安心感をどうやって持ってもらったか
とにかく初期のBacklogでは、プログラマーが一生懸命デザインしたにも関わらず、やはり、デザイナーのデザインしたものに敵うわけがありません。
そこで、デザイナーに深く参加してもらってデザインをしてもらったことにより、ちゃんと企業で運用されている印象を持っていただくことができました。
会場にて「プログラマーはデザインが苦手ですよね?」と参加者に聞いたところ、笑い声とともに、多く手が上がりました。
国は違えど、抱える問題は似ているようです。
Backlogは商用リリースから継続的にデザインもリニューアルを重ねており、それも安心感に繋がっていると思います。
当たり前のことですが、大切なことだと思います。
また、デザインとはちょっと違うのですが、プライバシーマークをちゃんと取得し、サイトに掲載したことにも触れ、「日本だと非常に重要な事だ」と説明すると、たいへん関心をいただけたようです。
組織の大きさの問題など、デザインだけではなかなか解決しない「安心感」ですが、さらに利用者からのフィードバックを積極的に受け付けている話などもして、「安心感」を持っていただくためにどのような努力をしているかも会場で共有させていただきました。
デザインで入力時などの使いやすさをどうやって作ったか
こちらは詳細な話で、決められた時間内にいくつも例をあげることが難しく、少しだけですが例を紹介しました。
例えば、課題の担当者のアサインを簡単に入力できるように、候補者リストを表示したり、「Assign to myself(私が担当)」をクリックすると、自分をすぐに担当に出来るということや、ドラッグ&ドロップでファイルがアップロードできるようにしたことなど、デザインではなくテクニックな話になるとは思いますが、ご紹介しました。
コラボレーションツールとしてのあるべき姿の模索
Backlogはプロジェクト管理ツールですが、「ツールなだけ」の存在になっていては、ヌーラボのモットーである「コラボレーション」を促進することは出来ません。
プロジェクト管理ツールでありつつも、チームのコラボレーションに貢献する「何か」がなければ、Backlogではないのです。
ということで、そのようなことを詰めて会議したBacklogのマーケティング合宿でやった内容もお話しました。
上記のイラストは、Backlogを使う前と使った後で、どういう風に変わるのか?というのを描いたもので、拡大しているイラストは、「Backlog使用前の殺伐としているプロジェクト」と「Backlog使用後の協力しあうプロジェクト」を表現しています。
このように、Backlogを取り巻く環境をデザインし、定義することで、例えば「Backlogスター」や「絵文字」などを取り入れることが出来たということを会場に共有して、体験をデザインすることの重要さを訴えてみました。
話してみて
話した後の質問タイムでいくつかの質問を頂いたのが、すごく嬉しかったです。
多少なりとも伝わったんだという、実感が湧きました。
『どのようにユーザーのフィードバックをうけているのか?』という質問に対して、問い合わせフォームや、オンラインユーザーコミュニティの説明などをさせていただきました。
また、『ABテストを行っているのか?』という質問には、ABテストとは違うけど、社内や、一部の協力してくれるユーザーで、正式リリース前の機能を使ったりしている旨を説明させていただきました。
非常に、楽しく話をさせていただきましたので、また、機会がありましたら、よろしくお願い致します。
発表に使った資料は、以下になります。
おまけ
ミーハーながらも、当イベントに登壇していたPHPの生みの親であるRasmus氏と、JavaScriptの生みの親であるBrendan氏と写真を撮っていただきました。